オリバー・ツイスト(監督:ロマン・ポランスキー)

 地味なのであまり知られてないのかもしれないが、池袋限定の映画フリーペーパー「buku」を持参すると毎月29日は1,000円だったりするので、池袋HUMAXシネマズ4で18:40の回。サンシャインの「うちょうてん」は開演30分前ですでに立ち見マークが出ていたので、次点候補にしていたこちらへ。
 別におすぎのCMに惹かれて観ることにした、のではまったくなく、ダンボールの中から上下巻の文庫を買ったきり、結局読んでいなかった「二都物語」が出てきたので、いくらか罪滅ぼしになればという思いもあってである。



 ……うーん。みなしごのオリバー君は、亡くなった母親や親切にしてくれた人への恩を忘れずキリスト様への信心も厚い「良い子」だったので、そんな心を見抜く眼のある金持ち*1に拾われて、この先幸せに暮らしていくのでした?
 キリスト教圏の人にとっては、何かしら心を打たれる高い寓話性があるのかしら。主体性や自己主張のあまり感じられない、素直さだけがとりえのオリバー君“だけ”が幸せの階段に一歩を足を踏み入れることができて、それで……?

 オリバー君、君を助けるために、19世紀のロンドンの街の片隅で、不幸せな女が小悪党の男に撲殺されて、その男は君を人質にして警察に追われていた途中、事故で死んでしまった。君はそれに対抗する力はなかったのだけれど。

 生きる力が希薄なだけなら、そんな人間が主人公のフィクションはいくらもあると思うけれども、いつのたれ死んでもおかしくないような環境で、ほんとうに力のない子供が、そりゃ苦労もするが、わらしべ長者的に不幸を幸福に転換していつのまにか幸せになっていくって、それが素直で優しい心をもっていたから、ということのみで説明されるような映画をいまさら観て、自分はどうすることもできない。



参考:公式サイト

*1:このブラウンロー氏なる紳士を演じるのがセドリック・ハードウィックという男優。つーかワトソン。スリ団の元締めの杖をつき背の曲がった老人が、いつしゃきっと立ち上がり髪の毛と髭を毟りとってジェレミー・ブレッドに変身するかと気が気でなかった。つーか、ワトソンの先祖だろ、もう。そんな訳で、ずっとこの老紳士がワトソンにしか見えなかったことも、話に入り込めなかった理由の一つでありました。