言い訳くさい、と切り捨てるのは容易いが。

  • 我が糧は空想なり――「映らないアニメにはまってしまったんですよ」

 http://d.hatena.ne.jp/otaku_interview/20070511



 専門有料チャンネルやネット配信や動画投稿サイトの急速な充実は、地方在住の若者に上京してオタクライフを満喫するんだ!という一昔前のモチベーションを薄めさせているのだろうか。上京前後にネットなんぞ影も形も無かった時代の自分には、ちょっともう、想像がしにくい。
 しかし「映らないアニメにはまってしまったんですよ」と語り、家電メーカーの修理センターで伝票整理、配送事務などを担当しているというインタビューイー(当時27歳)において、今現在、差し迫った問題はそこではない。

まあ、でも、そういう不便はこの際どうでもいいんですよ。友達がいないのが問題なんだよ。おなじ趣味の友達がほしい。

やっぱ一般人とは自分で線引きしてしまうんですよ。この人たちとは違うんだな、ってのが職場でも感じるんだけど。なんでみんな野球好きなのかな、とか(笑)。みんなスポーツ好きなんだよ。いや、おれもやるのは好きなんだけど、観るのは別に……だから、福岡に友達は一人もいないわけですよ。人見知りだからオフ会で探すとかも無理だし。

だから、おなじ趣味の友達ってもうできないんじゃないかと思ってる。なんつうか新しく友達を作ろうとかって気力がないね。若くないし。

親はやっぱり実家の土地を継いでほしいみたい。あと、息子なんで近くにいてほしいっていうのもあるだろうけど。言ってみれば、親はおれが必要なんですよ。それを無視してまた東京に出るとかはしたくない。誰かが必要としてくれてるのにそれを断るっていうのがおれにはできない。東京でそれ以上におれを必要としてくれる人がいてくれるんだったら親を蹴って来れると思うんだけど、まあ、いないんで。あるいは東京で就職しちゃってれば、親もしかたないって納得してくれてたかもしれない。でも、そうじゃなかったし。

おれはこの先の人生をほぼ諦めてる。たまに東京に遊びに来て、ストレス発散するくらいで終わっていくんだろうなあ。なんていうか、自分のしたことの報い? 大学ちゃんと卒業して、東京で就職してれば、たぶん、楽しく暮らせてたんですよ。


 親兄弟の存在が彼を外に向かわせる動機ではなかったことが一つ、読み取れる。福岡に居続けなければならないと考える理由は、「親はおれが必要」だからなのか「自分のしたことの報い」だからなのか。インタビューイーの言葉を、アニメとかゲームに嵌ったからという理由付けが透けて見えたり「大学ちゃんと卒業して、東京で就職してれば、たぶん、楽しく暮らせてた」という末文が言い訳くさい、と切り捨てるのは容易いが、そうしたくないのはどうしてなのかをよく考える必要がある。そう切り捨てることはあまり意味をなしそうにない。