コミティア80――新規購入した主なサークルから。

もともとコピー誌で発表されてたものらしい。9話分を収録してオフセ化。
「…人間のまね/してるの?」
「…つらい事きくんだね/まち子ちゃんは」
ラーメンをおごってもらった後、ホントは何も食べなくても動けるゾンビに投げかけた、まち子ちゃんの一言。そんなまち子の母のママゾンビは孕んで入院してしまうし、謎の存在である「再生委員」や再生機の手にかかれば、腐ったり欠損したりしても(中途半端に)再生させられてしまう。不条理の存在であるがゆえに、物語にする場合は必ず“お約束”という枷を必要とするはずのゾンビから、その枷を引き剥がしてしまう小田の力技(というか気まぐれ?)。
「…お前に食われたら/俺、お前の中で/永遠に行き続け/ちゃったり/しないか?」
「ゾンビのくせに/そんなポジティブな/精神論やめろ!!」
ゾンビらしく生きる(死ぬ)ための社会構築を目指すことなど及びもつかず、まずは定職に就くことが優先。でも、ゾンビゆえの就職差別。ちょっと気を抜けば硫酸弾でズコーン。
貴族的不死人のドラキュラでは決して描けない。単に両手だらりでヨタヨタ歩いてれば良かったゾンビ稼業は彼方においやられた。


  • baka
    • コピー誌「うつうつ姫 序章」

このティアでの最エロ。ぴくりともしない着物幼女を人でなしが激しくなぶる。つまり、女性が感じてない=感じてる男に読み手を移入させるエロス。肉の固そうな幼女の肢体の存在感がそれを可能にしているのか。要注目作家。


  • リカオ 《ナナツボシ
    • オフセット「ルビーちゃんと虹の花」

魔法使いのルビーちゃん、アゲハ奥さんの結婚の思い出アイテムを壊し、代わりのものを探す旅に。ほのぼの系マンガを開拓するのは楽しいねぇ、と思わせてくれる。ラブラブドラゴン夫婦が滅法。


ボウイナイフ作“ほしのこ”、伊藤綱誌作“スターキャノン”の短編2本を収録。ボウイナイフはフラッパーの2006年12月号に新人奨励賞が載った人。“ほしのこ”は、月面生まれの「星の子」が地球に“還る”ための体力訓練の日々を描く。構成、絵ともしっかりしていて悪くないのだけど、地球に“還る”動機が、次世代の「星の子」の地球帰還に自分のデータ生かされるから、というのはちょっと壮大過ぎた。もしくは理解力の高さに対して無邪気が過ぎる。同じテーマで、別の動機を描いて欲しい。



  • ユイビ 《Patrick boy
    • オフセット「cameo」
    • オフセット「Period」

異世界ファンタジーイラスト集。西洋、東洋、イスラム、エジプト、ケルト、北欧、和風、現代ファンシー、童話風、様々なテイストがアリ。なんでも手を出せて吸収できるのだろう、うらやましい。


作者はコミックGUMBOで4コママンガ「人間噂八百」連載中。
コピー誌2冊は、GUMBO連載が決まる前に持ち込み用に起こした、ラノベネタ4コマ。あとがきで作者も描いてるが、至ってフツウの学園マイナー同好会ネタの範囲。というか、ラノベ専門の部とか同好会ってあるだろうか。文芸部を仮の姿に実態は……、ってところが多そうな。部員募集ネタの「ラノベ読者のほとんどが帰宅部ってことでしょ?」ってオチは、さもありなん。
あと、無料ペーパーでもらった「人間噂八百」のクラウザーさん編が、なにかと面白い。楽屋の壁に加藤ローサとか描いてあれば、確かに作者のココロの叫びだ。


  • 木山王水 《仏小鳥》
    • コピー誌「恋してパティシエ」
    • コピー誌「恋してパティシエレシピ」
    • オフセット「メガネに恋してパティシエ」

パティシエを目指す和菓子屋の娘と洋菓子屋のツンデレ跡取り息子のコンビで送る、「お客を幸せにするとびっきりうまいケーキつくるぞ!」なお話。親しみやすい絵柄に惹かれて購入。普段、こーいうストレートな青春成長物語が載る雑誌を買ってないので、そういう意味でも新鮮に読めた。小学館とか学研の学年誌のテイストが好きな人に。


  • 桐沢十三 《キノコ灯
    • コピー誌「ビックリキノコ団地」
    • コピー誌「走る17形」

800円もするコピー誌ってなんだろな(笑)。ホッチキスやテープでなく、プラスネジとリベット留めという、収納時に他の本にやさしくない作り。
黒丸の「目」と葉っぱ型の「口」をつけたコンドームを頭から被ったような異形のデカブツの集団がスーツ姿でタバコをくゆらせながら「やぁ」とやる夢オチの話(わけ分からん……)が、笑えた。全90ページ近くすべてを、ファミレスで墨を使って一発描きで描いたらしい。


  • 杉なみたろう 《まりもや
    • イラストペーパー
  • 戸塚安康 《魔術コマ劇場
    • コピー誌「喫茶がらん堂 吹けば飛ぶ」

なんか、なんか、面白れぇ、という味わい。うん、こーいうの好き。奥付にも遊びがあって。目ぇ付けといて、損ないですよ、きっと。


企画展の一つで。昔の航海術の紹介とか。こなれた読み物マンガ。


いつかの日常マンガ。デートの約束をすっぽかしてプラモ工作にいそしんでいた彼氏の自宅を急襲、とりあげた戦闘機を自作の鼻歌交じりで台所の角に投げつける彼女が、小気味良い。はしもとしんのような、ぽやっと眺めていたいカップルをもっと読みたい人。


  • 幸せ1500 《しあわせまんじゅう
    • オフセット「いつかその差がゼロになる日。」
    • オフセット「しあわせちょっとHスケッチ」
    • オフセット「♪ハミング♪」

商業を先に知ったロリエロマンガの若手旗手。金髪or栗毛の西洋ロリ幼女を描かせたら右に出る人はあまりいない。ハードに淫らに、というより、愛でるタイプ。大判イラスト集とか出したら受けそう。


  • 《極上レジスタンス》
    • コピー誌「マジョるしか 2」

魔女っ娘3人が大活躍の4コマ“リィリ編”“ドーラ編”“ルシカ編”を収録。あまり4コマには食指がのびない自分だが、なんか懐かしい香りを感じたので購入。
隆盛を誇る、いわゆる萌え系4コマが、10-30秒前後や六畳一間の時間・空間で特定人物同士のユルい会話をネタとして完結するのに比べて、3、4コマ目に時間・空間の跳躍がある。萌え系にくくるのをためらわせるのは、やぼったい独特の絵柄だからではなく、テンポと広がりが違うから。
一番気に入った4コマは「だから…/20リットル/でしょ」。


月面土産「ウサギモチ」で一発あてようとしたウサ耳コンビの宇宙船をナゾの宇宙怪獣が襲ってきて……、というSFコメディ。イラスト中心だったティアでは著者初のマンガ。サジタリウステイストのごちゃっとした宇宙船が見てて楽しく、表紙の困った顔で決めポーズが、また可愛い。


最初の上陸から8年を過ぎた外大陸にやってきた新米“冒険者”。街の周辺はあらかた開拓されつくし、一発逆転で地図になってない危険地帯に踏み込んでみたところ……。
宿屋の女主人に借金して安いほうの地図をやっと購入、戦士二人で後方支援もなくいきなり遭遇した未知の敵から逃げ回った末になんとか倒す。いきあたりばったり、何に巻き込まれてるのかもよー分からん。新米はそれでこそ。地に足着いたロールプレイは、好感が持てるよ。
釣りの基本がヘラブナなら、TRPGの基本はゴブリンからー。


  • 八幡絢 《1945
    • コピー誌「咲乱皇國 水穂ちゃん 日本国擬人化物語。」

ネットでおおっぴらに触れずに、即売会場の片隅でこそっと笑っているほうが誰にとっても幸せなんではないか。そういうことを思い出させてくれる。水穂ちゃん=考えなしのドジっ子って、実際、職場の同僚なんかにしてしまうと、殺意を覚えるのもしょうがないよね、というくらいでここはとどめておきましょう。