11/22公表・11/30提出予定の都・青少年健全育成条例改正案の公表日時点における問題点の抽出。


改正案原文(入手・公開者は山口貴士弁護士)
http://yama-ben.cocolog-nifty.com/20101122seishounenjourei.pdf



ざっと読んだところ、旧「非実在青少年」関連は七条二号、八条二号の2つ。
趣旨はほぼ変わらず。
「不当に賛美」「誇張」の定義が不明。
ネット規制は推奨携帯電話とフィルタリング努力義務など。
児童ポルノは定義を児ポ法に準じるとの但し書きが入った。



今度の改正案は「不当に賛美」の対象に「婚姻を禁止されている近親者間における性交」が入った。この定義には、例えば、兄妹・姉弟の双方が成人の場合も該当する。
18歳未満の青少年を描いてなくとも反社会的というだけで排除の対象になりかねない。
だから、例えば、シギサワカヤの「九月病」はおそらく対象になりえる。
「不当に賛美」しているかどうかは見解が分かれるところなのだろうが、対象になりえるという時点で問題がある。想定される規制対象範囲があまりに広すぎる。
成年コミックマークをつける必要が出てきかねない。
ここで指摘した問題点を分かりやすくまとめたイラスト(http://img.f.hatena.ne.jp/images/fotolife/c/cuervo/20101122/20101122142551_original.jpg?1290403617)があった。
「対象は「非実在成年」に拡大!」というキャッチコピーは上手いと思う。



一方で、十八条関連では、いわゆる「着エロ」規制について触れている。
こちらについては、読む限り、妥当な条文に見える。
だから、13歳未満の実在青少年を対象にした「着エロ」規制を通す代わりに、旧「非実在青少年関連」規制に該当する七条二号、八条二号関連を条文案から削らせて、その上で改正案に合意するような、一種のバーター取引も検討されていいと思う。
ただし、七条二号、八条二号関連をそっくり削らせることが最低条件だ。
けれども、11/30の提出予定まで1週間しかないため、削らせるための交渉が可能かどうかはかなり微妙に思える。
仮に、改正案条文の公開があと1カ月、いや1週間でも早ければ、そういったバーターも手段としてありえそうだったのかもしれない。



都議会議員へ、手紙やメールで、改正案の問題点の指摘と反対をお願いする働きかけを再びする必要がある。




児童ポルノについて「何人も所持しない責務を有する」とした前回案の項目を削り、「都民は根絶に理解を深め、自主的に取り組む」と代えた。前回案では拡大解釈されるとの漫画家らの批判を受けたもの。
都と事業者の「根絶に向けた責務」を定めた項目も削った。前回案に反対の都議会民主も賛成に転じるとみられ、再提出案は自公票と合わせて可決される可能性が高い。
書店に対し、一般書籍と分けて置くよう求める漫画、アニメの対象は、性的暴行、近親婚など刑法や民法に触れるような「性交または性交類似行為」を「不当に賛美」する作品などと定義し直した。

http://www.nikkei.com/tech/news/article/g=96958A9C93819695E0E0E2E3958DE0E0E3E3E0E2E3E2E2E2E2E2E2E2;da=96958A88889DE2E0E2E5EAE5E5E2E3E7E3E0E0E2E2EBE2E2E2E2E2E2

確かに、「児童ポルノ」の単純所持規制に該当する項目はなくなっている。しかし、法律である児ポ法で収拾がついていない単純所持規制の問題を、地方自治体の条例で導入しようとしていたことが稚拙なのであって、これをもって評価に値するなどとはとても言えない。


また記事では、「都と事業者の「根絶に向けた責務」を定めた項目も削った。」とあるが、実際には今回の改正案で「根絶するための環境の整備に努める責務を有する。」(十八条の六)とある。単に「根絶する」と「責務」の間に「〜環境の整備に努める」という文言を“緩衝材”として挿入しただけで、大筋の意味合いは変わっていない。
記事はミスリーディングを誘導している。


旧「非実在青少年」関連について触れた、「書店に対し、一般書籍と分けて置くよう求める漫画、アニメの対象は、性的暴行、近親婚など刑法や民法に触れるような「性交または性交類似行為」を「不当に賛美」する作品などと定義し直した。」という文章も、「定義し直した」などとはとても言えない。
先に問題点として指摘したように、「非実在青少年」の代わりに「非実在成年」とでも呼ぶのがふさわしい解釈に改めて、規制対象範囲を拡大したというほうが正確なのではないか。



続々とあがってきている他社の記事は、どれも見出しに「(規制対象を)明確化」という文字が躍っている。都の説明をうのみにして改正案の条文を読んでないことが透けて見える。
明確化はされていない。一部の規制案が削られ、残った規制案はあいまいなまま、というのが現実だ。