「ぼくたちには野菜が足りない―畑に関するLesson1」(淺沼広太)スーパーダッシュ文庫

 某掲示板で一発ネタっぷりを爆笑されていて興味をもったので、「ここほれONEONE」「all you need is kill」に続きスーパーダッシュレーベルから3冊目の購入。個人的にそーいうキッカケでもないと手を出さないレーベルということなわけだが、よく読んでる電撃やソノラマに見られる文体とは、明らかに異なるのが新鮮だった。

 まず思ったのは、これはラジオドラマの脚本だということ。地の文章で、登場人物の内面や行動以外の部分、学校の建物の様子とか、主人公の家の様子とか、農業専門学校らしい設備とか、そういったディティールの部分をまったく書かない。その分、途切れなく続く会話によって、ストーリーがめまぐるしく進行していく。
 そのへんのディティールをSE以外で表現しようがないラジオドラマには、脚本化修正なしでそのままもってこれそうな内容(ナレーションにも限界があるし、うざったくなるので頻繁には入れられない)。なごやこーちんという人の挿絵も、キャラのビジュアルを最低限補完しているだけ。

 柱になるアイデア一発と数人分のキャラクターだけで本一冊分の話はつくれるし、それを出版することがライトノベルではできるんだなぁという、フットワークの軽さというか、ほんとにライトであることのメリットを精一杯享受してる作品だと。


 あとよくは知らないのだけれど、「スレイヤーズ!」に代表される90年代前半〜中盤あたりに新たに形作られたと勝手に想像してるライトノベル文体って、おそらくこんなもんなのかなとも思う。いまさら、その時代の作品に手を出す気にはなかなかなれないので、ほんとに想像になってしまうのだけれど。スーパーダッシュ文庫というレーベルが全体として目指してるのは、決して「all you need is kill」的な方向性ではないんだろうし、そうすると神林長平の推薦文で「all〜」を買った自分のような読者は、このレーベルとはこの先も一定の距離を置いて付き合っていくことになるのかなぁ、と。看板シリーズなんだろう「R.O.D.」もアニメはともかく、本まで手を出そうと思わないし。まぁ、このへんは独り言。



 ところでスーパーダッシュの装丁や名前って、小学館のスーパークエスト文庫を思い出させて、なんだかたまにちょっと切なくなる。