少年シリウス 7月号(創刊号)

 ケロロ軍曹のアニメが面白いから買ってみたけど「ケロロ軍曹以外、読むマンガがないよぅ」という小中学生の少年エース読者は、いますぐ少年シリウスに乗り換えろ!




 いいね。ひさびさに最初から勢いのある創刊。事前情報だと、児童文学やライトノベル系の作家、イラストレーターとのコラボ企画、原作マンガが、前面に押し出されてる印象があったけれど、一般マンガのほうがはるかに充実してる。それこそ皮肉も入るが、車田兄ぃの真正面少年マンガ「ビートエックス」で創刊した10年前の少年エースを思い起こさせるほど(そして、ほどなくエヴァマンガが人気爆発、マニア系に路線変更)。


 勢いを象徴するのが、「ロボとうさ吉」加藤和恵)。新人らしいが表紙、巻頭カラーに据えるだけあって、今回掲載マンガ中、確かに一番の出来。*1

 ――ほかに誰もいない荒野の星で暮らすロボット?のロビン少年のところに、脱獄囚のウサギ人間が逃げてくる。そこに追手がかかり、ロボット少年の隠された力が目覚める――

 ロビンの純粋さ、ひたむきさに浸れ。見せ場である、釘ネジで力が発動するシーン、追手のロボットとのアクションが、分かりやすくかつ迫力十分。ジャンプ的、マガジン的な王道路線に近いが、それらの雑誌で鼻につきがちな、「理屈っぽさ」「生きる意味」といった余計なテーマがいまのところないのがいい。ストレートに壮快で胸を打つ。


 電撃文庫の挿絵家が初のマンガ挑戦「Aventura アヴェンデューラ」翠川しん)。ネームが多いし、感情描写をそのネームに頼りすぎかなという感じはあるが、じっくり読むと、和やかに味わいがある。少女マンガの絵柄は、現在の連載陣のなかだと案外武器になるかも。


 アッパーズ組から「ジョバレ」の白井三二朗がセンターカラーで新連載「DearMonkey 西遊記。いっしょに天竺へお経を取りに旅立った兄がいきなりちょんぱされ、復讐に燃える妹。この手の描写がOKの雑誌ということにまず安心した。今回掲載された連載のなかで、一番先が読めない。そういう意味で次号が待ち遠しい。


 もう1人アッパーズ組から「妹選手権」の堂高しげる「もえちり!」都道府県別「ネギま!」方式できたよ(笑)。ギャグはちょっとすべり気味だし、大阪娘以外の方言が無視されてるのは違和感があるが、47人一覧の見開きを見てるだけで楽しい。「愛媛美神」と「和歌山美環」、「鳥取シェラザード」と「長崎ザビーネ」は、ライバル関係になるのか。「佐賀睦美」はキャラがひど過ぎ。佐賀県人は、抗議の手紙を。あと、「滋賀琵琶子」もネーミングに抗議を。えーと「広島志麻」はもしかして、“おまんら許さんぜよ”(極妻)ということですか。


 少女マンガから「きみはペット」の小川彌生が少年誌初登場「BAROQUE バロック。男主人公が掲載マンガ中、唯一ヘタレっぽい。長いまつげと厚ぼったい唇に騙されかかったぜ!


 「幽霊旅行代理店 ソウルメイトツーリスト」(原作:根元新、作画:ふる鳥弥生)。店についたらもうバイトするんだろーってのは分かりきってるので、後半に少しもたつき感。墓地でのドタバタはテンポよし。文字通り細い線の気弱なヒロインは可愛く描けてる。


 「DoubleCross 裏切りの十字架」旭凛太郎)。おそらく大和田秀樹のアシ出身と思われる絵柄。人間に仇名す怪物を駆るダークヒーローもの。アクションシーンの位置関係がちょっと分かりにくい。パートナーの女キメラが人気出るかな?


 少年誌初登場かな?の山口譲司「0←→1Rebirth」。人殺しまくり、伏線初回で出しすぎ、誰が主人公格かわからなすぎ。だけどこの人のマンガは、連載の始めはたいていこんな感じなような気もするので気長に読んでいく。


 創刊前に受賞者を出してる新人賞MyGo!入選作「ユウナギレクイエム僕と彼女の復讐記」晴瀬ひろき)。巻頭カラーで受賞インタビューつき。うーん、これが入賞50万円のハードルだとしたら、ちょっと、ね。他の掲載陣の勢いが良過ぎるのかもしれないが。毎月入賞者を出せるコンテストとしてやっていく予定のようだが、あまり無理して出す必要はないかも。


 巻末カラー「龍眼 ドラゴン・アイ」藤山海里)。どちらかいうと月マガでよくありそうなマンガ。設定とか行動の理屈とか駆け引きとかが、余計に感じられる部分もあるが、主人公の性格はサバサバしていて悪くない。


 ほかに、はやみねかおる田中芳樹あさのあつこ、の児童文学原作マンガが3本。どの作品も、悪く言うと、強弱というか山場にかける。けれども、おそらく原作がそうなんであって、そういう地に足の着いた子供目線にこだわった、こちらとすると懐かしく移入しやすいところもある。箸休めてきな位置付けとして。4コママンガなんかを入れられるよりは遥かにいい。


 一番児童マンガ向きと思われる能田達規の読み切り「時間救助隊 タイマー3」は個人的にいまいち。「ピース電器」で培った得意のメカ物をもってきたのはいいが、話の展開がほんとうに小学生向けど真ん中過ぎ。そこまで低学年よりの雑誌のカラーではなかった。悪くはないんだけれど、誌面のなかで浮いてる。編集者も注文の出し方間違えたか?


 小冊子小説の「助悪郎」はまだ読んでない、つーか、マンガだけで十分面白いです。



 次号以降の連載陣がまた、期待させる。
 
 創刊2号から、原作:雑破業、作画:石川マサキのコンビが魔女っこ学園モノで新連載。雑破は「ちょこっとSISTER」に続く一般マンガ原作2段目、石川マサキは初の一般マンガ進出。がんばれ、ひぢりれい。「人造人間ポポコちゃん」「PRAYER BJ」好きだった。
 堂高、白井に続いてアッパーズ組みから、アニメ化が決まりながらアッパーズ休刊で原作が止まってたまがりひろあきが「つくねちゃん」を再開。スクエニから、「学園ノイズ」終了後、ヤンガンに読み切りを一度掲載してた猪原大介×オオシマヒロユキが新連載。

 でもって、3号。このままエロマンガから戻ってこないのかなーと残念に思ってた「イグドラシル」の越智喜彦=おちよしひこあじす・あべばが、ひさびさにオリジナルで一般マンガに帰ってくる! エロも決して悪くないんだが、一般マンガ時代のイメージが強すぎて抜けないから、あえてエロ作品には手を出してなかった。打ち切りマンガ家の汚名返上なるか(ほとんどは休刊が理由だけど)。



とにかく、まず、創刊号読んどけ、だ。



参考:「月刊少年シリウス」公式サイト | WEBシリウス







※【メモ】……月刊マンガ誌の新創刊は、去年1月の「コミック・ラッシュ」以来。ターゲット層がより近いところでは、一昨年12月の「コミックブンブン」以来。その前の2002年は、2月に旧エニックスからの大量移籍で「コミックブレイド」、3月に「COMICゼロサム」、8月に「チャンピオンRED」と多かった。

*1:いやいや、加藤和恵、ティア作家だった。本棚を調べたら、「最後の侍」(http://nijiiromanshon.at.infoseek.co.jp/samurai.html)買ってた、買ってた。同じく連載を始めた藤山海里と佐々木ミノルと合同サークルでつくってるこちら(http://nijiiromanshon.at.infoseek.co.jp/NP2.html)とこちら(http://nijiiromanshon.at.infoseek.co.jp/w-rainbow.html)も買ってたし。新人賞が同人OKを売りにしてて、1回目の受賞者はティアで編集にリクルートされたとインタビューで話している。
どうりで掲載作品の波長が自分と合う分けだよ。そのあたりの事情を割り引いて、今回の感想は読んでもらったほうがいいかもしれない。あと、前から各マンガ誌の編集部が持ち込み受付の出張所を出しているティアに限らず、同人市場にこれまでになく広く門戸を開いた“大手の少年誌”が出来たという意義は、大きいかもしれない。