ノンフィクス ナックルズ Vol.1

 「うわしん」亡き後のポスト岡留をささやかれる久田将義実話ナックルズ編集長が発行人として送り出す「世の中の理不尽に喧嘩を売る雑誌」、その創刊号。

 表2の煽り文句は「極上のノンフィクションは最高のエンターテイメントである」。しかり。ゴシップもしかり。先週一番笑ったのは、セレブ杉田を鮎川旦那がヒットした「跳び蹴り? 回し蹴りよ!」訂正報道だった。

 特集は、「石原都知事・恐怖の歌舞伎町浄化作戦」。松沢呉一の「東京都、条例の嵐の犠牲者たち」が、秀逸。今の歌舞伎町の風俗産業の壊滅振りが、実際に足で稼いだライターにしか書けない、具体名を交えて報告されている。松沢の記事を含め全部で4本掲載されてる他の歌舞伎町関連記事は、石原のカジノ構想などでいくらかネタがかぶってたりするが、他の記事と比べて、もっとも最新の歌舞伎町の動向を扱ってることがよく分かる。
 家賃の高い歌舞伎町の雑居ビルでペイできる事業は風俗が一番。その雑居ビルを潰してカジノをつくりたいのだとしたら、風俗産業を追い出せば、借り手がなくなって困ったビルの所有者に、カジノを誘致を請け負うデベロッパが、札束をちらつかせて売却をもちかける。その構図を作り出すため、新宿署だけでなく他の所轄の応援まで借り手“浄化”にあたってるのではないか……。
 ここまでは、連想ゲーム的な噂話として、流布されてるのを掴むことも可能だろうが、松沢の記事には、カジノ誘致がささやかれていた一角の「かに道楽」が突然閉店したとか、二丁目にあった稲荷が撤去されたとか、不動産をもってる系列店は摘発のお目こぼしがされてるらしい(天下り先をつくった後に上納させるため?)とか、それらしい周辺のネタが随所に盛り込まれており、石原強権への、ひたひたとした胸糞の悪さを助長させる。

 ほかに、オウム、金首領様、北海道警ウラガネ、イノキ、都井睦夫、77歳の女性死刑囚、ヤクザ、コンクリ殺人、などもろもろ。どれも読みごたえがあって、これで税込み600円弱は安い。