きっと最近のエロマンガは面白くなってるはずなのに。
- 9月11日に生まれて――色々
http://d.hatena.ne.jp/pecorin911/20051101/1130835999
伊藤さんの本では「マンガが面白くなくなった言説とはなんであったのか?」「キャラとキャラクターの分離」、この二点が大きな問題提起になっています。当然、この二つを巡る議論が交わされたわけで、興味深かったですよ。
前者の議論に関しては80〜90年代に漫画評論にかかわった人間の多くがあたかも枕詞のように「最近の漫画はつまらんツマラン」とゆーてたわけですね。お前はどうよ? といわれると、ぼくはあんまりそういうことを言ったり書いたりした記憶がない。というのはぼくがかかわっていた美少女系のエロ漫画の第一期黄金時代が80年代中〜後期です。いったん90年前後の大弾圧時代を経て90年代に突入して、倍々ゲームで成長したジャンルです。その現場に居合わせた人間としては「面白い♪」の一言でした。
大塚英志さんが、吾妻ひでおさんの作品を美少女系エロ漫画の到達点じゃ、みたいなこと言ってるわけなんだけど、じゃあ、その到達点以降はどうだったのか? というのがぼくの仕事なわけです。
結論からいうと吾妻ひでお的な意味での美少女漫画はなるほど吾妻ひでおが到達点でオッケーなんですが(トートロジーだけどね)、これも「つまらなくなった」言説のバリアントかもしれません。
実際はそこから変容し、あるいは進化した「美少女系エロ漫画」は幾つもの到達点を抱えています。なんせ20年以上のドラマがあるんだもん。それを無視するのはどうか? ということです。
80年代前半までの黄金期は大塚がまとめてきた。
一方、90年に「ANGEL」でいわゆるセックスありのエロマンガに目覚めた自分にとって*1、コミックジャンキーズやエロマンガ誌内のコラム、書評などがあった90年代後半までは、バックナンバーや単行本、脳内の追体験を繰り返すことでなんとか当時の流れをまとめにかかることはできないでもないが、その90年代よりもよほど投下資金に余裕があるはずの21世紀に入ってからのほうが、なぜかエロマンガの有り様を掴みがたくなってるのは、それについての鋭い評論や幅広い視野をもった言説が目に入りにくくなってるのかな、とは思う*2。