「勤務中異状なし」(かずみ義幸) SEED! COMICS


 シードおだぶつを知った翌日、渋谷の文教堂で。返品整理に入っている様子はなく、普通に買えた。


 コミックメガストア不定期連載している松本ドリル研究所名義のエロマンガと同人誌しか知らなかった作者だが、商業誌デビューはこの単行本に収録された電撃大王掲載作品郡(01年〜04年)のほうが早かったようだ。


 アキバ勤めの幼女警部が衆人観衆の前で生着替えショーだったりの表題作は、1話〜4話のそれぞれ、話のテンポがあきらかにバラバラで、5話目以降のオファーがなかったのだろうことも、やむなしかなぁというレベル。他の読切もネームが詰め込み過ぎだったり、まとまりのなさ過ぎる話が多く、これはさすがに大王編集部でも(あえて含みのある言い方をしておくが……)自分のところで単行本でまとめようとは思わなかったのか。
 一つ一つの話では、響くものはあるんだけれど。表題作の1話目、「一件落着」「第2話」「再捜査!」などの幼女発のネタは、かなりツボにはまったし、読切「ときめきエンコード」のたたみかける突っ込み待ちのあからさまなネタの数々を最終的に岡本太郎で落とすその落差などは、見るべきものがあった。けれど、偶然繋がってるだけかも、という印象もぬぐいきれない。
 表紙の幼女に惹かれて買った人は、たいがい後悔したんじゃないか? といったクチの本だろう。


 かといって、じゃあ、自分もそうだったのかといえば、そうではなく、1,000円分のもとはとってたりする。だってこの作者、明らかに、ファンだよ。ゆうきまさみの。というか「R」の。臭いがぷんぷん。


 たとえば35P。
 「しょーらいはマンガ家になりたい!」と“ばんざーい”する幼女警部の背後から、「なりたいってあんた警察官だろ」と突っ込むコマ。


 たとえば49P。
 1コマ目・ぱーぽ君人形に無体をする幼女警部を説き伏せて、目を伏せてほっとひとりごちる女事務員の画面手前で、無体を再開する幼女警部。
 ↓
 2コマ目・スピード線を背景に、幼女警部からぱーぽ君を“がっ”とひったくる女事務員


 たとえば表題作4話。
 話の展開が、「R」7巻収録の初夢オチ戦隊モノ。



 いっしょに買ったシード連載作品の「あけおめっ! ①」では、そういった「R」成分はほとんど感じられないので、04年限りのマイブームだったのかもしれないが、ギャグ調の読切オファーがあった時に、またこういうのを描いてくれないかしら。


勤務中異状なし (Seed!comics)

勤務中異状なし (Seed!comics)