少年ブラッド 創刊号(5月号)

 「月刊コミティア」。


 無料配布の創刊準備号が書店に出回り、公式サイトが出来た頃、はてなキーワードだったかどこかのブログサーチだったか忘れてしまったが、どこかしらを経由してあるブログで見かけ、思わず膝を打った。*1
 マンガを中心にオリジナル作品のみの発行に限定していて、将来的に商業進出を狙うプロの卵が多く集うコミティアと、作家陣のほとんどが新人(や同人出身者)で作品のすべてがオリジナルマンガの少年ブラッドは、確かに重なるところがある。同人とプロという垣根の違いを除いて。



 ……そのはずだったんだけどなぁ。



 安い。いや、特別定価240円が安いのはそのまんまなのだが、なんというか、値段分の面白さなんである。*2ソフトバンクじゃなくてダイソーが発行元なんじゃないかと思うくらい。
 別の言い方をすれば、編集の存在が感じられない。ダイソーが発行元ならそれは当たり前だ。出版部門はないのだから。でも、ソフトバンクにはある。ゲーム誌の歴史は長い。何度もの名称変更を越えて生き残っている「ドリマガ」に、一昨年惜しくも幕を下ろした「ザプレ」。少年ブラッドはその流れを汲む。表紙タイトルの左端には小さく「ドリマガ2006年5月号増刊」。マンガ誌参入するんなら、新しい雑誌コードくらい取れよ……。*3



 巻頭カラーの「シチ=フク」(渡辺とおる)が22ページしかない。週刊や隔週刊だってストーリーマンガの新連載には当たり前に30〜40ページを割いてくる。いわんや月刊。しかも新創刊。50ページオーバーで当然だろう。そこに22ページ。たったの。巻頭に置くからには今後の雑誌の柱になる作品にと考えているはず。その扱いがこれ。作家の責ではない。そういうオファーを出したか作家があげてきたページ数にゴーサインを出した編集サイドの思惑がまったく理解できない。



 オタク向けのイラストレーターを揃えたカラーピンナップが巻末で、新作ゲームやアニメを紹介するカラーページが巻頭付近というのも解せない。紹介と読者プレゼント用のブツがバーターになってるのが明らかにしても、これはフツウ、イラストが巻頭にあるべきだろう。



 もちろん、個別の作品で読めるものはある。連載一話目なら「拳鋼少女 リク」(弐篠重太郎)、「源流武闘伝 -ORIGIN-」(フカキショウコ)。読切なら「キミに魅せる空」(カザマアヤミ)、「WAPPA!」(山崎毅宣)。けれど、連載2作品がこれから柱になりそうかというとなんとも読めない。創刊号で読めないのは雑誌として不味い。あえて言うが、読みきれない自分の「読み」の浅さという問題以前に、浅い読者にもおっと思わせるインパクトをもたないマンガばかりというのは不味い。新人に誌面を任せるのはいい。オリジナルマンガで勝負をかけるのもいい。けれど、プロらしい作品にブラッシュアップされた気配がないのはどうだ。同人レベルの作品しか載ってないという蔑称にしたくて「月刊コミティア」と言い表したつもりは毛頭なかった。けれど。



 次号で新人の5作品(原作:宗原光流・作画:シヒラ竜也「X-assult イグザルト」、榎本マキ「押せ!押せ! スタンプ学園!!」、TOBI「MAID DE KNIGHT! -メイドでないと!-」、高山瑞穂「HOLA!! -オラ!!-」、柩めち丸「白螺旋 -ビャクラセン-」)が新たに始まる。読切か連載かは不明。カラー予告が載っている「X-assult イグザルト」はそれなりに達者な絵だが、準備号で予告のあったベテラン作家を早いところ合流させるようにしたほうがいいように思う。



*1:こちらの記述でした。→http://d.hatena.ne.jp/sonoe/20060314/1142272102

*2:マンガ雑誌・単行本は、そもそも単価が安い。言い換えると、値段に比較した提供娯楽総量が、ほかのエンターテイメントよりも相対的に高効率。最近はネトゲがその位置を脅かすが、あちらはお金の代わりに膨大な時間を引き換えにさせる上、システムとして中途で放置しづらい。いつでもどこでも、値段に対して数倍、数十倍の面白さを提供できるマンガのボーダーラインは存外高い。

*3:準備号が配布されたときに、増加か別冊か、と自ら書いてたことに今、気づく。それなら、別に増刊扱いで正しいのか……。なんか納得し難いが。