少年シリウス 11月号

毎月ここ(のコメント)を書くとか言っといて、すっかり2ヶ月ごぶさたしてました。
…というか報告するようなニュースもなかったんですが、今月は少しありまして、実は「ロボとうさ吉」は来月号(11月号)でひとまず終わります。
ドーン!!!!!!
と思いきや次の月からすぐ始まります。
…つまり1部完、2部スタートというカンジです。
でもかなり変わるので読んでらっしゃる方はビックリすると思いますが、まぁ楽しみにしててね!

「新生!! 巻中カラー」
「今度のロビンは怪獣退治だ!!!!」
「HERO誕生!! 太陽系を丸ごと救う星の子ロビンが外宇宙からの侵略者と超絶バトル!」


 そんなわけで、この11月号掲載分で「天王星編」が最終話を迎えた「ロボとうさ吉」。次号から、新章「ロボとうさ吉外伝 スターゲイザー」が始まる。「ロボとうさ吉」を読んでいない人に向けて一応、説明しておくと、次号予告にある「怪獣」「外宇宙」「侵略者」といったガジェットは、今まで全く描かれてきていない。ロビン、うさ吉のメイン2人に、ヒロイン役として元軍(ソル)少佐のモモを加えた3人の冒険活劇、といった趣になるものと思われる。Wikiの「ロボとうさ吉」は、

連載当初は低年層向けの「夢と勇気の大冒険SF」と言う感じだったが次第に戦争描写や犠牲者、死人などが増え見た目は可愛いが内面は少々ハードな作風へと変化していった。

と紹介しているが、まさに連載当初の「夢と勇気の大冒険SF」へ回帰していくのだろうと予想される。


 そういう意味では、週ジャンの「タカヤ」や、ヤンジャンの「天使のルージュ」(山花典之)が「ひみつのルージュ」(同)のような、極端な路線変更とは異なる、と言えなくもない。戦う階級をバンタムからフェザーに転向するとか、エントリする競技の種目をグレコローマンからフリースタイルに転向するとか、そういった大掛かりなものではなく、トレーニング先のジムの変更くらい。



 シリウスHPで改題のお知らせがあったのが8/8。そのコメントの2週間前、7/26に発売された9月号に掲載の14話では、天王星へ逃げ込んだロビンを無傷で捕獲することを命令された「赤の七」部隊の7人のもとに、命令を下した張本人のオプト大佐が艦隊を引き連れていきなり乗り込んでくる連絡が下されていた。この時点で、7人のうち、ロビンと直に接触して戦ったのはまだ7人のうち2人に過ぎない。 「赤の七」のうち何人かは「やはりな」「今回は何か変だと思っていた」「……大尉 「星の子」はもう重要じゃないのかもしれない」「この任務の本来の目的は「天王星」だったってことかも」などと意味深な発言を始め、いきなり自ら乗り込んできた大佐は「どうもしないよ」「星の子捕獲の任務はただの保険だ」「――もともと「赤」は殺人が本分……忠誠心も薄い」とちゃぶ台を返し始める。



 この急展開に続く、15話、16話で、ロビンの髪の毛のDNA解析が100%終了し、クローン開発計画の目処が立ったことが明らかにされる。つまり、DNA解析がうまくいかなかったときのために無傷で捕獲しておくという「保険」をかけたのが、「赤の七」出動の狙いだった、ということにしたらしい。コントロールの効くクローンが大量生産できれば、不安定なロビンの異能は不安材料にしかならない。ここで軍としての目的が「捕獲」から「抹殺」に変わる。一応、話の筋は通している。



 確かに、10話では、大佐から「例のもの」をと言われてロビンの髪の毛が入ったカードを渡すモモ、の描写がある。カードを、皇帝陛下と側近の“老人たち”に渡すよう傍らにいた部下「白の二」のレイコ・バルバロス少佐に渡す大佐。伏線はあった。が、この段階で、クローンが狙いだったと伺える描写は一切ない。もしかしたら、ロビン捕獲専用のBC兵器開発や、病床の皇帝陛下を回復させるための薬学的利用だったかもしれない。
 さらに、解析が100%終了する前に、天王星へ艦隊を出撃させるほど急ぐ理由が描写されていない。15話で、四肢切断状態からパワーアップを果たしたロビンに艦隊を殲滅させられそうになっているピンチの大佐のもとに、カードを渡したレイコ少佐から解析終了の知らせが届き、「…私は賭けに勝った…!!」とつぶやく。まだ「赤の七」は二人しか負けてなかったし、解析が終了してから準備万端な状態で艦隊を出撃させればよかったんじゃね? と指摘するのはあまりに容易い。



 何より、「ロボとうさ吉」という物語全体に対してダメージを与えることになったと思われるのは、この“早送り”な話運びによって、左目のネジ=太陽系を滅ぼすほどの闇の力、を克服していくロビンの内面の成長が、ずいぶんと端折られてしまったこと。艦隊を落とした後、天王星の皇女マナに向かって笑顔で言う「おいらは闇に勝ったよ」の見開きカットのセリフが、なんとも不安を誘い、頼りなくてしょうがない。



 ……路線変更が決まった以上、むりやりにでも辻褄を合わせる必要があるわけで、そういった違和感の置き去りは当然出てくる。そのことをいちいちあげつらっても、詮無いことではある。「スターゲイザー」を本誌予告が「外伝」、作者の加藤和恵は本誌目次やシリウスHPで「番外編」と言っていることに、編集部と作者の間のズレを感じたりもするが、とりあえずは期待している。





 で、本題は、ここから。
 繰り返すが「スターゲイザー」には期待している。そこに他意はない。
 ただ、この仕切り直しがありえるのなら、「ゴウジン」や「海の人」や「DoubleCross 裏切りの十字架」や「0⇔1 Rebirth」や「「21世紀番長」は、なんであっけなく尻切れトンボに終わってしまったのか? というハテナが拭えない。また逆に、なんで「四季使い」や「魔法使いのたまごたち」を仕切り直させないのかが分からない。
 仕切り直すまでに単行本で3巻を出すくらいの人気はあったから? 創刊号で表紙と巻頭カラーを担当していたから? 作者にやる気があったから? 「四季〜」や「魔法〜」は原作付きだから?
 一応、再度、強調しておくが、「ロボとうさ吉」を責める意図は毛頭ない。ただ、半年前に5月号の感想で編集方針にそれなりの一貫性を見ていた自分としては、創刊から約1年半を経過して、「スターゲイザー」の仕切り直しに初めて、大きな変動が起き始めているように見える。



 仕切り直しにこれまでにない予兆を感じるのは、「スターゲイザー」改題の一方で、まっさら新規の新連載が始まっていないことがそう。8月号で「アメフラシ」(鈴見敦)がスタートしてから、この11月号まで新連載がない(「時間救助隊 タイマー3」は前にも掲載があったシリーズ連載)。12月号も新連載の予定はなし。月刊誌で4号続けて新連載がない状態は、新陳代謝が低下していると見なされてしょうがないだろう。
 もう数ヶ月前からアシスタント募集をしている押切蓮介については、まだ一度も本誌で予告がない。7月号で連載ネーム準備中とあった、新人賞出身の瀬川サユリと倉橋ユウスについても音沙汰が無い。WEBでは、ルノアール兄弟の童貞マンガ快調をとばしているが、本誌抜擢の可能性は薄い。



 “玉”は仕込まれつつあるのがうかがえるものの、具体化までのスピードが衰えているように見受けられる。「怪物王女」「テレパシー少女 蘭」「Dear Monkey 西遊記」「龍眼」「ソウルメイトツーリスト」「乱飛乱外」などの、特大人気作家でもなくマニア系に受けがいいわけでもなかった面子が成長し、誌面が充実していないということは全くない。が……。



 11月号では、新人賞の一次先行を通過した15人の名前が発表され、12月号で最終結果を発表と予告されている。けれど、11月号の次号予告で、15人のうちの1人の名前と作品名が新人賞受賞作として12月号への掲載がすでに予告されている。そういった、台割りちゃんとつくってんのか? というちぐはぐさは以前からあったのか、自分が急に気にするようになっているだけなのか。








連載再開「銃姫」(作画:一文字蛍、原作:高殿円

 学園編スタート(で、いいのか?)。いかにもなクラスメイトを配置してくれたお陰で、格段にお話は分かりやすくなってる。あとは、バトルシーンにどれだけ説得力をもたせられるかだが……。


「ZERONの火蓋」(神宮寺一

 1、2巻絶賛発売中。自分が絶賛。こちらもロビンと同じく無垢な心をもった人型ロボットが主人公である。内面を直接には深く描かず、周囲の人間に代弁させる形のため、そういう意味では統一がとれてる。が、最終的な解決が異能による力尽く、のように見えてしまうマイナス面をともなうので、アクションがいかに派手でもストーリが平板になりがち。難しいところ。


テレパシー少女 蘭」(作画:いーだ俊嗣、原作:あさのあつこ

 百合。


怪物王女」(光永康則

 百合。


巻中カラー「Dear Monkey 西遊記」(白井三二朗)

 今度の刺客は、酉の化身の羅刹女と、寅の化身の虎力大仙。手枷足枷の異様な風体で悟空たちからテンテンをさらっていった虎力の正体は……。
 第1話から通して核になっていた重要人物が、まだまだ物語は続いていくと思われる中盤以下の流れの中で、切り出されてきた。また、毎話、毎話、よくこれだけテンションを高めていけるもんだと感心する。なのにまだ表紙を飾ったことがないんだよね……。3巻が出た今月号でやっとセンターカラー。4巻こそはさ!


「龍眼」(藤山海里

 ドラクル相手でなく、遺恨で身内同士が戦ってる話が、ずーっと続いてますが、人VSモンスターの派手な切り合いと同じくらい、人型VS人型で繰り広げられる細かな身のこなしも非常に読ませる。
 こちらの主人公のイッサが、ひょうひょうとした懐の深さでもってシビアな過去と運命に対峙してわりかし首尾一貫したキャラクターであり続けられているのと比べると、「ロボとうさ吉」のロビンは、当初精神年齢で7〜8歳くらいに描かれており、そのロビンに太陽系を滅ぼすくらいの力を秘めていることと父親代わりだった博士の死の理由の一端を担っていたことを背負わせた上で乗り越えることを求めたのは、ちょっと酷だったのかなとも思う(今になって言う、後付けだが)。だから、3頭身→8頭身への外見年齢の変更(に合わせた精神年齢の改定)と、天王星編の仕切り直しがあったんだろうけど。


バロック」(小川彌生

 次は2月号に掲載。


「ふぁにぃみゅうじあむ」(伯林)

 金髪ツインテールネッシー編。人間娘がいじられるより、「サンダ対ガイラ」のようなモンスター同士でいじってもらったほうが安心して読める。


「魔法使いのたまごたち」(作画:石川マサキ、原作:雑破業

 だから、この話で何がしてーんだよ! 同人か!(言っちゃった)


「ソウルメイトツーリスト」(作画:ふる鳥弥生、原作:根本新)

 連載が始まって以来、初めて、ヒロインが大きく打ちのめされる出来事が。この話がうまく転がっていけば、おおまかには真理子かわいいよ、で済んでしまっていた今までの話から、一皮剥けるかも。


表紙・巻頭カラー「夜桜四重奏」(ヤスダスズヒト

 せっかくの単行本発売記念表紙カラーなのに、ヒロイン3人がまったく活躍しないんじゃ、ご新規さんの食いつきが悪いんじゃないのかな……。


「乱飛乱外」(田中ほさな)

 今度のヒロインは、飯綱姫。名前と、黒ロング+長マフラー+太腿剥き出しの外見は、もう明らかにカムイ女性化。あと、背景の密度が何気に濃くなっていて、時代モノらしさが高まってきた。



月刊 少年シリウス 2006年 11月号 [雑誌]

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