「鳴渡雷神於新全伝 ①」(もりもと崇)小池書院
時代劇月刊マンガ誌「刃-JIN-」で連載中。以下、裏表紙の作品紹介から。
明治初期。
「明治の毒婦」と呼ばれ、悪事の限りを尽くした「雷神お新」が嵐の夜、脱獄に成功した…!
文明開化・華やかなりし時代に雷鳴を轟かせる女賊・お新!
「繪入淀川新聞」の新聞探訪員矢藤専三との関わりを軸に描くユーモアピカレスクロマンここに開幕!!
「男女同権」とうそぶきながら、「まあこれが戊辰の役で大活躍したアームストロング砲ですか」と、ベッドに縛り付けた板垣退助に女性上位でのしかかって行く毒婦・お新の色情狂ぶりが、とても痛快。自由民権運動のため演説会で全国各地を回り男尊女卑への反対を唱える板垣を、虐げられている立場の女性であるお新が、拳銃で脅した物取りのついでに嬲っちゃう。
板垣に近づくために利用した白人の巨漢は、襲われそうになったところを下駄で鼻柱を潰して拳銃を奪い、物取りをもち掛けてきた3人組には、親分格のアームストロング砲をわざと突っ込ませた上で「早っ」「三こすりはんかい……」と一蹴する。
日本刀を持っても色恋沙汰には中学生並みのストイックさだったり、かつての想い人を忘れられず……といった戦いヒロイン像ばかりの一般マンガ誌(少女誌はまた別だろうが)からは出てこないキャラクターが新鮮。個人的には「真夏の夜のユキオンナ」(大山玲)のユリなんかが、色情狂現役時代はきっとこんな傍若無人ぶりだったのだろうなあと想像させる。今よりは無法が許される一方で、女性であることの自由は遥かに許されなかった、明治という時代に生きた(求められた)毒婦、という設定もソソル。作者後書きによると、明治の中頃、「毒婦モノの読み物が少し流行」して、「明治一代女」や「高橋お伝」などの講談・芝居として有名になったものがあるという。
それと、話数前半で多用されてる独特のトーンワークが、あの人そっくりだなぁ、と思っていたら、山本康人のアシスタント出身ということで、納得。
- 作者: もりもと崇
- 出版社/メーカー: 小池書院
- 発売日: 2006/10
- メディア: 単行本
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