今日のPICK UP。


 弁護士山口貴士大いに語る: 【イベント告知】「同人誌と表現を考えるシンポジウム」【再掲】で告知されているよう、明後日の土曜、池袋で開かれる。タイトルのみを見ればいまさらなものだが、中身は深刻。昨年12月、警察庁が設置した「バーチャル社会のもたらす弊害から子どもを守る研究会」が最終報告書(PDFファイル)を出し、この中で、子供を性行為の対象とする架空の物語を提供する同人を含むコミック、アニメ、ゲームなどを槍玉にあげて、自主規制を求めるという名目で圧力をかける端緒にしてきているため。シンポジウム開催の最大の理由になっている。
 報告書の中で同人に触れているのは次の2箇所。

ウ コミック


コミックのほとんどは、何の制約もなく制作されている。そのため、子どもを性行為等の対象とする内容を含むコミックが相当数制作されている。また、子どもを性行為等の対象とする内容を含むコミックのうち、都道府県の青少年保護育成条例により有害図書として指定されるものは一部に限られている。
なお数人単位のグループで制作されるコミックいわゆる同人誌は専門店や即売会において販売されている。このようなコミックの中には子どもを性行為等の対象とする内容を含むものがあり、全体像の把握は困難であるものの相当数が制作・販売されている。

(4)子どもを性行為等の対象とするコミック等を子どもに売らないための対策を強化すべきである。

インターネット上のコミック等の販売サイトは、子どもの年齢確認に十分な保障がなされない現状では、一見して子どもを性行為等の対象とするコミック等であることが疑われるものについてはサイト上から削除すべきである。同様にこれらのコミック等のサンプル画像も削除すべきである。同人誌等の即売会等についても、イベントの主催者に対し、子どもを性行為等の対象とするコミック等を18歳未満の者に売らないための対策の強化を求めていくべきである。

 重要と思われる研究会側の提案、要請は、以前に書いたエントリで抜粋したが、同人について触れた箇所より商業コミックのほうが強く槍玉にあげられていると言っていい。であるのに、商業誌側よりも先に同人側がこのような行動を起こすのは、業界としての一体感と危機感が同人側により強いということを表すのだろう。
 商業誌は、いざとなれば、撤退をしてより利益の出るエロに向かえばよい。もしくはエロでさえないかもしれない。そこは文字通り、ビジネスライクに選択を行うだろう。少ないファンがどんなに惜しむ声をあげようか雑誌や単行本を買うことで支援しようが、それはそれだ。
 が、同人側は事情が違う。同好の士が集まった趣味性の固まりの世界であり、本当に好きでそこに集まっている人間が多い。つまり、思いのありったけを注ぎ込む場として同人を求めているから、そこを撤退して代わりの物を探すという選択肢はありえない。商業誌と異なるのはそこだろう。踏ん張る以外にない。


 参加するつもりだが、一つ気になるのは、論客の面子、数に対して、開催時間が3時間とあまりに短い。テーマの多様さを考えれば、語りつくせるわけがない。*1 当然、主催者側もそこは分かってやっているだろう。
 よって、狙いはアピール。同人に関わっている人間が、これだけまともな思考が出来て、愛情と誠実さを兼ね備えているということを示せるかどうか。結論らしい結論は、あるにこしたことはないが、最優先で求める事項でもないだろう。質疑応答も、この際ないならないでよろしい。*2 事前にアンケートをとって、熱心な参加者から鋭い質問が寄せられています、くらいの演出効果を狙うのもいいかもしれない。
 あとは、マスメディアに記事としてとりあげさせるインパクトをもたらすための動員人数。サンケイがわざわざ告知記事を載せてくれるくらいなので、それなりに気にはされているはず(それが好意的な視点からかどうかは微妙だが……)。


 論客の面子に関しては、虎の穴の鮎澤慎二郎、メロンブックスの川島国喜の2名があがっている。役職が分からないので、どの程度の発言権を会社から託されて壇上にあがるのかが不明。同人で儲けたい会社の本音が、自主規制の外圧にどこまで立ち向かうつもりがあるのか気にならないわけはないが、鮎澤、川島の両名の個人レベルの本音を語ってもらっても正直なところしょうがない。会社としての見解を述べてくれる人であることを期待する。
 面子の中に見当たらず気になるのは、著作権者側を正面から代弁する人間と、商業誌の人間の2種類。二次創作問題は今回は切り離して論じるのか? 商業誌側は、最大手と言っていいコアマガジンワニマガジンの2社のどちらかと、LOを発行している茜新社×コミックハウスの人間は出てくれたほうがベターだろう。

*1:例えば、エロマンガのわいせつ性を争っている松文館裁判で、何度公判を重ねて何人の証人が出廷したかを考えれば。参考url→http://www.geocities.co.jp/AnimeComic-Tone/9018/shoubun-index.html

*2:一つ質問したいことがあるとすれば、2年前の6月に控訴審判決が出てそれから音沙汰のない松文館裁判最高裁判決が、いつ出される予定になっているのかということだが。