コミック売上と「過去の遺産」。

ところが、この雑誌である程度人件費を回収しつつコミックスをいわば「ダンピング」して売ることで帳尻を合わせるというモデルが成り立たなくなってきつつある。
というのは、雑誌の売上が落ちる一方でコミックスそのものの売上が伸びているから
これはメディアミックスで「当てた」状態が多くなって、雑誌でなくメディアミックス作品経由で作品を知るようになったからなのだけど、この結果としてマンガを出版するということがハイリスク・ハイリターンになっている。
つまり雑誌の売上が落ちているので完全ではないにせよ安定して人件費を回収しつつコミックスで収益を挙げるというのが難しくなる一方で、コミックスの売上が上がっているのでリターンそのものは期待できるという状況なわけだ。
この状況は、雑誌を売っていたもののネットでの無料配信に転向したコミックBLOODや、最初から完全ネット配信のコミックSEED、あるいは無料コミック誌の「コミックジャンボ」のように、雑誌での回収をある程度(コミックジャンボはネットの有料会員である程度は「回収」している)あきらめたタイプが登場してきているのが象徴しているといえるだろう。(コミックガンボでした。失礼。ご指摘に感謝します)

http://scientificclub-run.net/index.php?UID=1196776176

分かりやすく説明できてると思うのだけど、「というのは、雑誌の売上が落ちる一方でコミックスそのものの売上が伸びているから。」というところは、若干認識を異にするので取り上げてみようと思う。



昔、「創」のマンガ特集で雑感を書いたのだけど、

一方で、ここ10年ほどの市場全体のコミックス発行部数は“見かけ”横ばい。見かけというのは、本文中に出ている出版科学研究所の調査によると、コンビニ売りのペーパーバック型廉価版が金額で10.2%を占めているから(この廉価版による底上げは、「零式」のコラムで 中山明弘氏が5年ほど前に指摘していたこと)。統計があるのかどうかわからないが、コミック文庫売上を含めると、もっとこういったリサイクル型のマンガ単行本は多くなるだろう。*1

http://d.hatena.ne.jp/bullet/20050508#p1

であって、新作マンガに絞ったコミックスの売上は実質、伸びてないと思うのね。


99年で底打ちして2000年以降は上昇してるように見えるコミックス販売額は、「1999年7月、小学館がMy First BIGの販売を開始したのを皮切りに、漫画を発行する出版社のほとんどが販売するようになり、」の経緯とそのまんまシンクロ。


10.2%という廉価版売上の割合を06年の数字に当てはめると、99年比較で実質横ばい、といったところでなかろうか。
金額が伸びた部分は、メディアミックスの大当たり作品が上澄んでるんではなく過去の遺産の再利用による上乗せで、その下の横ばい市場の中で、メディアミックスでばーんと売れた作品が部数を稼いで売れる本と売れない本の格差が広がりながらパイの奪い合いが激化している、とかそんな感じ。
だから、「ハイリスク・ハイリターン」はまさにその通りで、それを補強しただけですね、自分のは。





でも、ジャンボとガンボは似てるなぁ(笑)。誌面からただよう(ただよってた)臭いも。