児ポ法関連の参考link。

ところで反対市民活動側から「落としどころ」を考えたり提示したりするのは政治的に愚行だと某議員から助言されたことがあります。「落としどころ」は規制側が考えるべきことでこっちは突っ張れる限り突っ張るのが正しい。道理が通る範囲で。

ドイツ

その前提でドイツの刑法(リンク先は英訳)をみると、ポルノ頒布罪を定めた184条の第3項から第6項が児童ポルノ関連となっている。第3項は暴力行為、児童(14歳未満)の性的虐待、獣姦といったものを対象(object)として含むポルノの頒布などを罪としている(表現形態は問うていない)。第4項は、「児童の性的虐待」が実際のものか、真に迫ったもので、商業的な頒布などの場合に罪を重くしている(これで、第3項が実在の児童に結びつくものでないことがわかる)。

イギリス

ここで、漫画やアニメは「擬似写真」に含まれていない。その上で、イギリス内務省は、昨年、 Consultation on the possession of non-photographic visual depictions of child sexual abuseというペーパーを出している。ここでは、「児童の性的虐待を描いた」漫画やアニメの違法化について提案されている(おそらくはUNICEFECPATの働きかけによる)が、一押しは「みだらな児童の擬似写真」の定義拡大ではなくて、独立した法律を作ることとなっている。「みだらな」では定義が広すぎるし、罪も重すぎるので、範囲を限定して罪も軽くする、ということ(ただし、これでひっかけて捜索すれば本物の児童ポルノもどうせ持ってるだろ、という見込みも入っている)。しかし、結果としては、現在イギリス議会で審議中で、もう貴族院に来ている Criminal Justice and Immigration Bill 2006-07 to 2007-08では、「写真や擬似写真ではないが、それらに由来するもの」(鉛筆やコンピュータソフトでのトレースによるものなど)を児童ポルノに含めるということで、現実の児童の性的虐待からは離れない水準での改正に留まっている。

アイルランド

といったところで本題の児童ポルノだが、Child Trafficking and Pornography Act, 1998に規定され、児童ポルノの製造・頒布・所持が罪となっている。そして、児童ポルノの定義だが、年齢は17歳未満で、視覚表現と聴覚表現の両方が対象とされていて、実際の児童の場合だけではなく、児童として描かれているものは対象になっている。描かれる内容としては、児童の明示的な性的活動のほか、児童に性的活動を見せること、性的目的で児童の性器や肛門の表現を主題とするもの、といったあたりになる。ただし、前述の検閲機関を通ったものは児童ポルノには含まれない。

カナダ

児童の実在性は問題とされていない。処罰の対象は製造・頒布・所持・アクセス。ただし、カナダでは児童ポルノ禁止の範囲について複数の刑事事件で憲法問題になっていて、その結果、条項が無効とはなっていないものの、一定の範囲で制限をかける解釈が判例で示されている。1つは、カナダで児童ポルノ罪が定められてまもない1993年に、トロントの画家のEli Langerが子どもの性行為を描いた作品を展示したものが罪に問われたもので、1995年に、児童を現実的に害するものでもなく、芸術的価値がある、ということで、そういうものは憲法が保護するものだから、と無罪になっている。その後、別の事件に関して、2001年にR. v. Sharpeとして知られる最高裁判決があり、想像の産物の個人的利用目的の製造と所持と、合法的な性行為(例えば14歳以上18歳未満同士のもの)を、行為者自身が撮影し自身で所持している場合、の2つの場合は表現の自由とプライバシーの権利で保護されるので児童ポルノ罪に含まれないとされている(被告自身は、新しい解釈基準での差し戻し審で、数は減ったがそれでも児童ポルノ所持はあったということで有罪になっている)。前者の例外は、その前からの「芸術的価値」のテストが外れているというのがポイントになる。

オーストラリア

連邦の刑法では、児童ポルノの定義は18歳未満で実在は問わず、性的ポーズをとったり性的行為をしている場合や性的行為などをしている人物と一緒にいる場合の表現、性器や肛門、女性については胸の表現、といったあたりになる。しかし、実はこれはもっぱら通信サービス(事実上インターネット)経由での頒布やアクセスを禁じるに留まる。Classification ActのRefused Classificationに何が分類されるかは、法律本体ではなくてガイドラインになるが、ここでの年齢基準も18歳になっている(しかし、以前は16歳だったようだ)。リアルワールドでの児童ポルノの製造や所持、頒布の取り締まりは、もっぱら州レベルとなる。ここで実は基準がさまざまで、クィーンズランド州刑法では、child explotation material としては、16歳未満の実在の児童を基準として、製造・頒布・所持を罪としている。非実在の場合は、わいせつ物頒布罪の中で、16歳未満、12歳未満を描いている場合にそれぞれ罪を加重しているに留まる。ニューサウスウェールズ州刑法の場合も、児童ポルノ罪は16歳未満の実在の場合。非実在の場合は CLASSIFICATION (PUBLICATIONS, FILMS AND COMPUTER GAMES) ENFORCEMENT ACT 1995で連邦のレイティングに基づく頒布・上映の規制や禁止でカバーされるようだ。と、規制のありかたは州によって違うのだが、これを他の州にもわたってみていくのはそろそろ面倒なのだけれども、どうやら、16歳未満という線が現行の規制のようだ。ただ、連邦レベルの動きをみていくと、これはいずれ18歳へと引き上げられるのではないかという気はする。

アメリ

その後、Child Pornography Prevention Act of 1996(CPPA)という法律が作られて、これで連邦法典における児童ポルノ罪が「バーチャル児童ポルノ」に拡大された。具体的には、児童に「見えるもの」と、児童のような印象を与える形で宣伝などがされたり頒布されているものが対象となった。この法律は、直ちに違憲訴訟の対象となって、2002年にAshcroft v. Free Speech Coalitionとして知られる連邦最高裁判決で、前記の「バーチャル児童ポルノ」に関する部分は違憲無効となった。これを受けて、Prosecutorial Remedies and Other Tools to end the Exploitation of Children Today Act of 2003(略称 PROTECT Act of 2003)という、かなり大きい法律の中に、関係する部分を再改正する条項が盛り込まれた。
現在の連邦法典から定義の部分をみると、「児童に見えるもの」ではなく、「児童と区別がつかないもの」になっていて、絵画や漫画などは該当しないことが明記されている。また、内容としては性器・胸・陰部があらわになった性交等のほか、獣姦、自慰、サドマゾヒズム、性器や陰部の露出、といったものが挙げられている。その上で、何が罪になるかをみると、児童ポルノの頒布や受け取り・所持などが対象になる。この場合、含まれている「児童と区別がつかない人物」が現実の18歳以上の人物か、架空のものであることを訴訟の一定の段階までに証明すれば、訴追対象とはならない。この条文に含まれるもので、他にPROTECT Actで追加されたものをみると、児童に対し、違法な活動への参加を誘う目的で、児童と知って児童ポルノを提供することが罪とされていて、この条文に限っては「児童に見えるもの」が対象になっている。当該児童を性的搾取に誘い込むための材料としてのポルノの利用、ということで定義を拡大しているのだろう。もうひとつ、「わいせつ児童ポルノ」(現実児童に限定されない)か、「現実児童の児童ポルノ」を含むものと相手に信じさせるような宣伝などの行為も、罪とされている。これは憲法訴訟になっているので後述。
PROTECT Actでもうひとつ対象にしているのが、前述の「わいせつ児童ポルノ」で、これはわいせつ物規制の章に新設された条文になっている。前のCPPA違憲判決がMiller testを理由としていたので、それならMiller testによっても修正第1条で保護されない領域については禁止しよう、という方向で作られた。児童の性的に明白な行為の描写でわいせつなものであれば、製造・頒布・所持を、現実の児童ポルノと同様の罪とするもの。さらに、「わいせつ」の解釈の州間でのブレがあるためか、「児童や児童に見えるものが獣姦、サドマゾ行為、性交などをしている画像の描写で、まじめな文学的、芸術的、政治的、あるいは科学的価値を欠くもの」もこれに含めている。
現実の児童の性的搾取に関する内容は児童ポルノ罪とは別の条文で規定されている(こちらが元からある条項)。現実の児童ポルノの製造そのものは児童の性的搾取罪に含まれる。なお、これらの児童ポルノ罪全般について、リンク先の各条文を読めば分かるのだが、実はもいろいろ限定がついて、州間や外国とのやりとり、メールや通信などがからむ必要があり、純粋に州内のface to faceの中で完結しているものは含まれていないのだが、それは連邦法典と州法典の管轄の問題から来ると思われ、実際には各州の法典も見ないと全体像はつかめないのだが、それはとりあえず省略。
とりあえず現行法の説明は以上だが、このPROTECT Actが現在違憲訴訟になっている問題についても簡単に。問題は上述の「宣伝」の罪で、これが現実の児童ポルノの存在を必要としていないので、修正第1条違反に問われる状況になっている。United States. v. Williams という訴訟として知られていて、連邦第11巡回区控訴裁判所で違憲判断が出て、連邦最高裁で審理中になっている。最高裁での原告・被告双方、および法廷助言人による意見書もAmerican Bar Associationのサイトで公開されている。

多くの先進国では、性目的で子どもの性的虐待を描いたアニメ・漫画・ゲームソフトなども、「子どもの性的虐待」を社会的に容認することにつながるなどの理由から、その販売・提供・流布を、既に法律的に禁止または禁止する方向で法律の整備が進められています。私どもが把握する限り、少なくともスウェーデン、カナダ、米国(連邦法)が、法律でこうした「子どもポルノ」を禁じています。欧州評議会も、加盟各国に法的対策を促す条約を発効しました。また、カナダでは2005年、米国でも2006年に、日本製の子どもポルノマンガ・アニメの所持に対する有罪判決が出ています。

さて今回の目玉はなんと言ってもマンガ家さん75名によるはじめてのヰタ・セクスアリスアンケート!
今回アンケートにご協力いただいたマンガ家さんです。

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(敬称略)