読売新聞3/19朝刊16-17面で児童ポルノ法改正「単純所持」に関する記事


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一読して規制推進派の主張ばかりが目立つプロパガンダ記事。
取り組みやコメントが紹介されているのは、児ポ法規制強化のための署名キャンペーンを始めた日本ユニセフ協会、それに賛同するヤフーとマイクロソフト日本法人、協会と同様の強行な規制推進派であるECPAT/ストップ子供買春の会と弁護士の後藤啓二氏、単純所持を国際社会の常識だと主張してはばからないシーファー駐日米大使、全国で唯一単純所持規制を条例で入れており検挙実績もある奈良県県警の二滝享司調査官。
規制慎重派(反対派ですらない)の声は、「一方、「捜査権乱用につながる」「表現の自由やプライバシーの侵害に配慮する必要がある」などとの慎重論があった。」というわずか5行弱の文章が挿入されているのみで、しかも具体的な関係識者から取ったコメントではない。記者なら身につけておくべき基本中の基本である両論併記の原則を、この記事に署名のある月野美帆子という記者の人は教わってこなかったらしい。
また、児ポ法に関する簡単な説明はあるが、児童ポルノや児童、子供の法的な定義は一切触れていない。もちろん、現行法がイラストを対象としていないことも「準児童ポルノ」というあいまい勝手な定義を新たに持ち出して規制を狙っていることにも触れていない。シーファー大使がインタビューの中でしばしば口にする「子ども」が、法律上は18歳未満の高校生も対象にしていることも。ちなみに、3/11のキャンペーン発表記者会見で児童ポルノ被害者だった大学生の手紙が読み上げられたと紹介しているが、この大学生に日本ユニセフ協会や規制推進派の人間たちがどのような具体的救済を行っているかにも触れていない。*1この問題に関心の薄い読者にミスリードを招くチャンスをごろごろさせている。
そして、2004年の奈良女児誘拐殺害事件で「加害者の男が児童ポルノ画像を携帯電話に多数保存していたことが明らかになり、児童ポルノは性犯罪を誘発するとして規制論が強まった。」といった言い草などに象徴的なように、悪影響があるという前提の決め打ちで溢れた文章。偏った取材源からの受け売りとマスコミの醸成してきたこれまた偏った「世論」で記事を仕上げて、それが仕事とみなしてもらえるような会社は、さぞかし楽チンで居心地も良いだろう。
それに気になるのは、何ゆえに、この問題を「くらし 家庭」面の“生活 WIDE わいど”で取り上げるのか。なぜ、社会面や文化面*2ではないのか。インタビューに応じたシーファー駐日米大使が「世界共通の重要な問題」と強い口調で求めていることからすれば、国際面や政治面でもおかしくない。であるにもかかわらず、何ゆえに、「くらし 家庭」面か。同じ面で取り上げる多重債務や摂食障害の問題、CO2排出量抑制を促す自治体の取り組み、友達関係に悩む主婦への相談コーナー、子供から投稿された詩や手間ひまかけない夕食のメニューの紹介……などと同列に近い扱いで、この署名記事を書いた月野美帆子記者が伝えようとしているものはいったい何なのか。



収穫があるとすれば、ネットを中心に一部マスコミやブロガーの冷静な分析が山ほどでてきて、これらを読めばたいていの人は気づいてくれるはずだ……という考えは甘いことを再確認できたこと。読売の記事は、関心の低い人からすれば、一見、体裁は整っている。そういう整った記事を、生活面の記者が片手間に書くことができるくらいには、規制推進派は記事になる材料を揃え取材に応じる体制をもっている。大手マスコミが読売と同じような論調に流れていくなら、ネットを中心とした論陣の展開は限界もある。だからこそ政治家へ封書、手紙を送る攻勢が効く。




*1:触れていなければ、こちらのブログの方の反応に見られるよう、児童虐待被害者を救済するといった具体的な行動と直接の関係から限りなく遠い活動をしているという実情を知られずに済む。

*2:去年の終わりかに南東北の支社にとばされたらしい(福)記者が本社に居てくれたらなぁ……。