稚拙というか……
東京大学先端科学技術研究センター「ジャーナリスト養成コース」の取材手法が酷すぎる|マンガ論争勃発のサイト
http://ameblo.jp/mangaronsoh/entry-10114018314.html
journalism.jp
http://www.journalism.jp/works/2008/07/jcnex11.html
聞いてみたところ、小久保せまきという規制反対派の人をゲストに迎えてディスカッションしている「第一部 反対の理由」と、ユニセフ広報室の中井裕真にインタビューしている「第二部 推進の理由」とでは、構成がまったく違うので、単純に比較できないという結論。
「第二部」は、単純所持導入と創作物規制を訴えるユニセフの言い分にほぼ相槌・合いの手を入れるだけで40分前後のインタビューを終えていて、終了後に挿入された1分あるかないかのまとめが以下のようなもの。
「いやぁ、まぁ、話した感じはすごく使命感に燃えた方っていうかねぇ、いや、悪い印象ではないですよね」
「すごく誠実に対応してくれましたよね」
「実際、今日、話を聞いて、杉山さんの中で何かこう、変わったところってありますか」
「いや、変わったところはないんだけども、やっぱり、どっかお互いが、その、顔を合わせて話し合える場っていうのがあればいいかなーって、個人的には思うんですけどね、ただ多分、だからそれはユニセフが設定するわけじゃない、ユニセフが設定できないから、多分、あの話を聞いてると忙しくてね、いろいろなことをやってるからね、第三者なり、のが設定しなければいけないとは思うんだけど、まぁ、率直な話が聞けたということで今回は良かったんじゃないですかね」
「そうですね、じゃあ、今回はこんなとこで」
素人感覚まるだしというか、インタビュー出来たことで満足してるっぽいというか、邪険にされなかったことだけで安心しているっぽいというか、相手から何か引き出してやろうという野心が全く見られないというか、「忙しい」のは規制慎重・反対派だって同じなんですが。既存の方針を確認するだけならメールで済ませればいいのに。
東大、ジャーナリズムという二枚看板を掲げたコース*1のサイトで、そのまとめは、怒らないまでも時間を浪費させられたなぁという徒労感が先にたつ。この音声をニコ動にアップでもすれば、例によって中井氏が「〜はきちんと確認してませんが」とか正直すぎるコメントを端々でやっているので、また違った意味合いが出てくるとは思う。
稚拙というか、知識の量とは別に、単に真剣に考えてないのでしょう。もしくは内輪以外の目にさらされるという経験をあまり積んできていない。
一方で、「第一部 反対の理由」で行われているディスカッションは、世論の賛同をなかなか得られず規制慎重・反対の運動を「ロリコンの自己防衛だと言われてしまう限界」をテーマに、思索に富む内容で結構、聞ける。「第二部」でインタビュアーとしてつまらない仕事しかしてなかった人たちが、決してモノを理解していないわけではないことも分かる。途中に、単純所持規制についての見解を「んー、私は、もう、やっぱり、あがらいきれないかなっていう、社会の雰囲気とか、その、なんつーんだろうな……」「(児童ポルノにあたるか否かは)裁判官に任せればいい*2」といった、他人事的なセリフが入ったりして萎えるところもあるけど。
冤罪の危険があるとか、刑法のワイセツ規制でやればいいとか、そういった正論では世論の同意を得にくい状況の根っこにあるのは「ロリコン、気持ち悪い」。小久保氏がそういった状況について言う、「他人の性癖なんてゼッタイ理解できない」「ロリコンや表現を理解してもらう必要はない」「理解できないものへの恐れ、切り捨てる様式を改めさせないと」「えたいのしれないものを隔離して安心する精神構造に危険性がある」といった切り口は、世論の多勢は単なる開き直りと捉えそうだし被害者の児童の存在を無視しているという反論とかみ合わない心配は一方であるけど、武器として研いでおくのは悪くないように思う。エイズで深まった同性愛者への偏見がかつてに比べれば拡散してきたように、状況は変わっていくものだ(もちろん、もっと悪い方向へも)。
ただ、エイズへの偏見が拡散していったのも今回の単純所持規制論の盛り上がりも、いわゆる欧米からの外圧が要因として非常に大きかったことを考えると、規制推進派も慎重・反対派も結局は自陣の側から「決定打」を出してない。そこのところは、推進派に対しても自分を含む慎重・反対派に対しても、ちょっとうんざりする。