コミティア112 ―― よく購入している主なサークルから。

  • Hebmuller(ヘブミューラー) 《ROADKILL
    • オフセット「ROADRAGE」
      • 表紙に登場する個性豊な20人(主要キャラは6人)が、1960年代のオールドファッションなUSAを舞台に、出し抜き、裏切り、銃撃、カーチェイスを繰り広げる、待ってましたの200ページオーバー大ボリュームの群像劇。
      • 冒頭、登場シーンではあまりやる気なさげでサブキャラっぽい印象だった、眉毛チャイナの春蘭(チュンラン)が、友人のフィオナに一旦預けた100万ドルの危ない儲け話を、親代わりのじいさんとガタのきた中華レストランを立て直すために後乗りで横取りしようとする、アクドイけど根はいい娘(そして眉毛カワイイ)という、非常にツボなキャラクターで単独のストーリーを読んでみたくなった。オンボロピックアップトラックをゴミタメに豪快に突っ込ませたり、目的の車をバールで車上荒らしているところを案の定、敵に見つかったり、本筋に無関係なピザ屋の店員を人質にフィオナを脅してみたけど通じなかったり、そんなちょっとヌケたところもグッド。
      • ちなみに、人質にした店員の働くピザ屋は、サークルの旧作「COLD PIZZA.INC」に出てきた兼業殺し屋集団の秘密のアジトだということを了解して読むと、春蘭の人質作戦の無茶さが際立つ。
    • オフセット・合同誌「ANOTHER MUSIC ANOTHER ART WORKS」
  • 桟敷大祐 《神風戯画》
    • オフセット「ガソリンマスク VENT2」
  • 暇 《極上レジスタンス》
    • コピー誌「エロキチ先生」
      • イヤそうにしながらも手コキしてくれた、羞恥心に多少欠けたヤンキー女子高生と色々。
    • コピー誌「スティック&フィンガーズ´」
      • ちょっと頭の足りない義妹の挿入以外のあらゆるイタズラ。それを、かりあげクン的な淡耽としたギャグ調で。
    • コピー誌「嫁猫美猫さん」
      • 3作品とも、合法ドラッグという名前で売られている本当は合法でないドラッグをやってそうな人ばかり。
  • 澤江ポンプ 《失敗再生怪人
    • コピー誌「悪い魔法使い」
      • 7ページの会話劇。過不足なく展開が詰め込まれて、オチまで小気味良い。5ページ目、均等割りで同じ構図の連続した5コマ。4コマ目で「先輩が好きです」(ヤッ)と、ぐわっと盛り上げ、次の5コマ目で「私 結婚してる」(ガーン)と最速の切り替えし。うまいなぁ(その後のラスト2ページを使った話の回収の仕方も)。
  • 砂虫隼 《乱痴気事虫所
    • オフセット「ひなふくのおはなし」
      • 幸せかというとそこまで幸せではないように思うし、普通かと言われるとおそらく普通でもないけど、じゃあ、幸せってなんだろう、普通ってなんだろう。貧しい国でコーラを飲めて喜ぶ子供たちよりは幸せだろうし普通なのだろうけれど、そう思ってしまうことに胸がチクチクする。そこに、好き、嫌い、という補助線を引いて見えてきたもの。「好きなのを選べるようにしたかったんだから」という戦中を生きたおばあさんの言葉が訴えかける。
      • もう12、13年くらい買い続けているサークルだけど、過去に発行してきた本のベスト3を選ぶならその一冊に入れたい。
  • 耳式 《耳式
    • オフセット「八百狐」
  • 吉田鉄風人界の歩法
    • オフセット「留守居の件」
      • ネコっ娘の恥ずかしいところを見てしまったご主人のほうが恥ずかしそうにしているのを見て読み手のこちらも赤面(するくらいニヤニヤ)。
  • たいぼく 《おおきめログハウスく
    • オフセット「たいぼくログノート -木-」
      • イラストラフ集。女子の絵につく一言セリフがいい。単なるラフから一気に物語が生まれる。いいなーと思ったイラストの一言は「まだその気持ちわるいブログやってるんですかー?」。
  • 芋森あきら/大谷伶/舘ノ川駿/清水巻 《どんきでなぐられるとしぬ》
    • コピー・合同誌「コピー本 05」
  • てつなつ 《にしんそば
    • プリンタ本「糸井さんの右目とホッチキス」
      • 歯に衣着せぬ「糸井さん」は今日もクチが悪い。取引先と揉め事(糸井さんが悪いともいえない)を起こし、飛ばされた部署でも、クチの悪さは相変わらず。でも、部署の同僚のやさしさに甘えている自覚はある。けど、やっぱりクチは悪い。ほほえましい。
  • 桶(ok) 《ザ借家
    • コピー誌「コンピューターばばあちゃん 2」
  • T-10/位置原光Z/ペルライ 《クソライダー》
    • オフセット・合同誌「O.J.S.T. お嬢様チーム」
  • 泥沼 《犬と転校生》、紺津名子 《犬と転校生
    • オフセット・合同誌「犬と転校生 vol.2 100gの巻」
      • 100gをテーマに、泥沼の“旅は道連れ”、紺津名子の“トングの先から”の2編を収録。
      • “旅は道連れ”……昼下がり、大阪環状線の車中で偶然会った、名前を思い出せないくらいの関係の友達の彼女から、全部の駅の出発音を聞いて周ろうと、ありがた迷惑なお誘い。一旦、隣に座った彼女が、其の後はずっと、ドアのすぐ横=座席の手すり向こうに立って、主人公とどうでもいいような話を続ける(主人公の隣は空いたまま)。なんとも絶妙な距離感。
      • “トングの先から”……最近、よく店を訪れるようになったスーツの男性が気になり、毎回注文するポテトサラダを多めにトングで摘んでしまう奥手な「とーこ」が、世話好きな同僚女子のあるおせっかいで、一歩前に踏み出す。これが私の性分だからとか達観したつもりになっていても、実はそうじゃないし単にそう思い込んでいるだけだってこと、よくある。だから、こーいうおせっかい女子とか、そのおせっかいが恥ずかしくもうれしくて、一歩踏み出してしまう女子とか、実に好き。
  • Sody 《SLee Ve
    • オフセット「ちっちゃいこの本」
  • きみまる 《METRON めとろん
    • コピー誌「らくがきめとろん No.3 さんさつめ」
  • 戸塚安康 《魔術コマ劇場
    • コピー誌「生コン D」
      • 百合っぽく見せておいて、創世記。
      • 描こうとしてやっぱりやめたとおぼしき書棚が味わい深い。
  • みそくろ 《金はないが愛はある
    • オフセット「オーバーチルドレン アンダーアダルト」
      • いつもクセの強いキャラクターが登場して、楽しませてくれるサークル。今回の強烈キャラは、空気の全く読めない中学生男子「望月」。有利に教員採用試験を受けられるため、研修という名目でやってきた大学生の「大原」にも、同級生たちまったく変わらない距離感で接してきて、ちょっとした悩みの種に。周囲も、その強烈さに見合った扱い。この読みの感触は、よそではなかなか味わえない。ある理由で、部活から逃げ出した「望月」が、転んで振り返って見せた表情にハッとさせられる。
  • はり(おばけら) 《これっきり
    • コピー誌「アリスインワンダーメタモルジェネレーション」
      • 超人類を生み出す細胞を移植された「少女になりたい」願望が強い男4人。理想のアリス(究極少女)を生み出すため、今回の実験を試みたハカセの野望は適うのか――。
      • ハカセの俺理論すげえと。
  • こよかよしの 《中央構造線
    • オフセット「キ科学工房 #3 2/2 january's visitor」
  • たな 《
    • オフセット「おじいちゃんとパン」
      • ジャムやら餡子やらマシュマロやら、甘い食パンが好きなおじいちゃんと、「ちびすけ」と呼ばれる孫の成長を、見開きイラストの連作で。パンの絵が実際、美味そうでしょうがないのと、終盤に向かって(おじいちゃん……まさか……)と思わせた構成の勝利。
      • 「ちびすけ」の子供時代のパンの紹介文が、何気に子供のつたない文字で、憎い演出。
  • 烏田カッコン/サム/もち夫 《ミラクルVS葛根湯
    • オフセット「レクレーション Vol.6」
  • 朝陽昇 《朝陽昇
    • オフセット「起きろスワン」
      • 短編8ページ。徹夜で遊び、朝の公園で朝マック中の女3人組み。ふと目に入った、池の向こうのスワンボートをめぐり、たわいもない会話がはじまって――。
      • 3人組みの、気だるさと眠気をまとわりつかせた会話が、波一つない水面をしずしずと進むスワンボートとの格調高い会話にすーっとつながっていく、その流れが心地よくて、うまいなぁ。怒声一発、首筋をピンと伸ばすスワンボートで“動”が入るタイミングも。
  • 小樹藍りん 《藍色劇場
    • プリンタ本「ひきこもり修道女シリーズ 12 ひきこもり修道士と長い沈黙」
  • すぎむらなおき 《UP→UP!
    • プリンタ本「Girl Meets God 前編」
  • もぐこん 《Mogravity装置
    • プリンタ本「チヨちゃんはぶっとばさない」
      • チヨちゃんが男子に肩を貸すことになってしまったのが、ほんの一駅分。その間にどれだけアタフタしたのか想像するのに、ほどよい時間の余地という感じで、いいなと。
  • ノザキ 《0丁目》、時田 《0丁目
    • オフセット・合同誌「収穫」
      • 収穫をテーマにした、ノザキの“もろこしの祝福”、時田の“コンバインハーベスターズ”、ゲストのマイカタの“文化的原始人”の3本を収録。
  • 斉所 《粉骨堂
    • オフセット「calm 1」
      • Pixivに投稿された連作マンガ6本と、その前日譚的なパイロット版2本を収録。書道で身を立てようとしつつも道半ばの「凪(なぎ)」、その妹で母親としっくりいかず将来に漠然とした不安を抱く「樒(しきみ)」、その友人で人に言えない悩みをもつ「水絵(みずえ)」の3人が主な登場人物。誰目線の話になるかで、話のテイストが割と変わってくるのが新鮮。その中でも、「凪」の心象風景らしき、波に飲まれたり沈んでいくシーンの挿入の仕方が面白い。現在も投稿は継続中。「水絵」の話が、このまま超常ライトノベル系な展開でいくのかどうか気になる。(P&R投稿)
  • SUZ 《クロ僕屋
    • コピー誌「異土間行商人四コマ / 短編時代劇シリーズ「てならひ」」
  • けんほう 《俺の大空
    • オフセット「人間'15」
      • 人によっては今後の人生における成長の糧になったかもしれないエピソードが、淡々と消化されていく、この感じ。どのエピソードも読み終わった後、ヘの字口になってしまうような、この感じ。この切れ味の鈍さ、座りの悪さは、立派な武器。
  • ルーン・キャンタ・マープル(沼乃十座) 《スタッフWHY
    • オフセット「羅馬の魔術士」
  • 亀井薄雪 《ウスユキ
    • オフセット「追憶の森で」
  • こう1 《はしくれ工房
    • オフセット「姫さまは退屈を知らない 4」
  • 有永イネ 《Kで会うならば
    • オフセット「リイチくんは目立ちたくない」
  • うさみみき 《R-PANDA
    • オフセット「夜の唄」
  • 夜目新聞社 《夜目新聞社
    • プリンタ本「CARBONARA カルボナーラ
      • ヤマネコトマト運輸シリーズの新作。ある雨降りの朝、荷物の受け取りを拒まれて意気消沈し、閑古鳥が鳴く馴染みのレストランを訪れたキツネっ娘の配達員(主人公)。ずぶ濡れで沈む配達員を見かね、店主が強制的に決めたオーダーは、具の入っていないカルボナーラで――。  配達員を励ますために出したカルボナーラに、具が入っていない理由を語る店主を、いつのまにか配達員が逆に励まし、優鬱な気分は雨雲といっしょにどこかへ。決しておいしくはなかった具なしカルボナーラだけど、店主にとっては手放せない大切なもの。その理由が配達員に「また店に来よう」と思わせ、2人をつなぐ(ラストで、受け取りを拒んだ客先ともつながる)。誰かにとっては何でもないものが、その誰かとの間をつなぐ大切なものに変わる瞬間を、作者お得意のとぼけた遣り取りで軽妙に描かれる。ずぶ濡れでピンと毛が跳ねたキツネっ娘が、店主にタオルでわしゃわしゃされてるシーンが可愛い。(P&R投稿)
  • 金森まさ 《シャルル
    • オフセット「うつつのきみ」
    • コピー誌「うつつのきみ 番外編」
  • ぶるかにろ博士/リクウシ/ゲバラ/東 《初期形
    • オフセット・合同誌「初期形 特別号01 産地直送!フレッシュつまみ食い号」
      • リクウシ“平滑な断面……身近な動物たち編”。奇妙な生き物のイラスト寄せ集め。猫とサメのキメラっぽいのやら、シャチと蛙の相の子っぽいのやら、うねうねと手足や首が長いリスっぽいのやら。なまめかしさにため息が出る。
      • ゲバラ“フューリーを見た!”……熱のあるエッセイマンガ。例のWW2戦車ムービーのどこにどう感動したのか、説得力ある説明。筆者が1年間、南大西洋沖で働いたマグロ漁船時代を振り返って、その時のホモソーシャル100%な世界における重圧や絆を、映画の中でドイツ兵を機銃で殺した新兵が戦車乗りの仲間として認められるシーンや、ナチの大軍相手にチーム全員で孤立無援の待ち伏せ作戦を敢行してしまうよく考えると無謀としか言えないシーンに重ねて、説明される。バイブルという「プライベート・ライアン」についても語ってほしい。
  • 西倉新久(シンク) 《ABXXX
    • コピー誌「星くずのステージ 番外編「あこがれの由比ヶ浜」」
  • ユエミチタカ(sorethroat) 《AMICA!
    • オフセット「Happy Public Domain」
  • 犬飼たかお 《犬飼鐡道
    • コピー誌「JK駅長 準備号 2」
  • CAT 《マタタビMIX
    • プリンタ本「旅はご用心 江戸の見世物編 其の六」
  • 373AM 《ハイッテル
    • プリンタ本「ビューティフル インダストリアル デイ オフ」