NHKスペシャル――サイボーグ技術が人類を変える


 http://www.nhk.or.jp/special/libraly/05/l0011/l1105.html


 上の本のことを書いたので続けて。


 この前、NHKスペシャルであったサイボーグ特集。もちろん見た。


 が、いままで触れなかったのは、サイボーグが一般化した社会の生活や思想がどのように変化していくのか、といったシュミレーションはすでにSFなどで数多くなされているし、プレゼンテーターの立花の語りには素朴な驚き以上の何らかの提言が見出せなかった*1ということや、次の日の性犯罪特集のほうが自分には切実だったということや、正直見た目がグロテスク、という印象を覆さない限りどれだけ技術が進もうと浸透していく段階はまだ遠くだな、という感じが強かったのと、もう一つ。


 研究室レベル、個人の被検体レベルの紹介にとどまって、あそこで紹介されていた技術が、今後どのような形で商品化されていく目処にあるのか、という視点がまったく欠けていたため、そこであの特集番組に対する評価を小さくしたから、ということがある。アメリカの軍事利用の動きなんぞをとってつけたようにチラ紹介したのみではまったく意味なし。


 たとえば、サイボーグ医療が今後進んでいくとして、その市場には製薬業界や医療具業界といった既存の事業者ではなく、自動車メーカーや他の産業機器メーカーなどの新規参入が活発に行われ、かつリードしていく可能性が高いだろう。資本力やこれまでのロボットスキルの蓄積など、段違いだろうし。

 で、そうなって実際販売、使用が始まった時、人間の身体を機械で補完することにともない生じてくる、個人の不安感や違和感、生理的な嫌悪感を、根本は機械メーカーの大企業がどれだけ理解しケアできる、するつもりがあるのかといった疑問などが自分にはある。製薬業界や医療具業界が現状、満足させているのかというと、先に紹介した本の通り、そんなこともないのだけれど。


 ES細胞などを利用した再生医療ビジネスよりは、機器の大量生産が難しい、需要が一定しない、個人にあったカスタマイズが必要、一生に渡るメンテナンスも必要――といった点で比較した市場規模はさほど見込めないかもしれないが、パーツやテクニカルな部分に、特集は焦点を合わしがちだったように思えたので、記しておく。*2

*1:もちろん立花にその程度の見識しかないはずもなく、放映時間や絞るべきテーマとの兼ね合いでばっさりやってるのだろうが。

*2:特集: NHKスペシャル補遺 - SCI(サイ)(http://matsuda.c.u-tokyo.ac.jp/sci/project/nhksp/)によると、「この番組は、近いうちに、再放送もあり、NHKのBSチャンネル、ハイビジョンチャンネルでフォローアップ番組が作られる予定があります。」とのこと。つーか、地上派でやったんだから、フォローも地上波でやってくれっての。