「DOGMAN SCRAP」(世棄犬)メガストアコミックス

 モノクロ作品は12本中3本が初収録(のはず)。「漫画はぢめて物語 第46015回“お姉さん危機一髪”の巻 (マル注)成人指定版」、「秋の大運動会奮戦記 PARTⅠ(?)」、「㈲ウルトラ警備保障」。
 ふんだんにカラーページも入っていてファンならお買い得ってやつだ。ただし初出一覧がないのが痛い。絵柄がころころ変わるので、昔の作品だと思ったのが、案外博内和代名義以降の作品だったりしそうだし。
 巻末マンガのネタとオチが司書房の旧版(ISBN:4887250908)とまったくいっしょでひとしきり笑う。
 しかし、博内和代はもう常識として、メガストアの後ろのほうにたまに載っていてすいすいと読み飛ばしていた馬利権造(ばり・ごんぞう)も、変名だったとわ。なんでこんなアメリカナイズされたモンキーパンチっぽい絵柄になっちゃったのか。「慢性破綻」に出てくる、自称画家の奥さんあたりの絵柄が一番好きだった(キャラクターとしても)。
 ドルフィンで連載していたサイバーパンクっぽいマンガは未収録。最終話近くで、コールドスリープ状態の老人の部屋に踏み込むあたりがラストになった(?)のを覚えているが、きちんと落としたという印象は薄かった。あまり満足のいく連載ではなかったのかもしれない。ファンとしては、バックナンバーをとっておかなかったのがくやまれるが。地球人種の保存のためそうとは知らされないまま異星人に飼われる話「Artificial Intention」に、SFの片鱗が見える。
 ところで、世棄犬が活躍してた当時のドルフィン(94〜96年頃)は、雑誌としても一番ノッてた。神出鬼没の不定期連載っぷりで“載ってればラッキー”だった「TOKYO POP」の井上眞改、読者コーナー投稿時代から液満載のエロ絵で注目を集めていた「犬雨」のたかしたたかし、しつこいほど兄妹モノにこだわって孕ませまでやったぢたま某、花見沢Q太朗、間垣亮太、摩訶不思議といった豪華な面子がぞろぞろデビューしていった(摩訶不思議はデビューは違うかもしれないが、最近復刊した「あくまくマジック」が初のヒット作だろう。そういえば米倉けんごもドルフィンで本格的にデビューしたんだったか?)。
 一方で、そんなライトな絵柄の作家たちとは異なる路線で、MAROや琴吹かづきといっしょに世棄犬が、ドルフィンのなかでは強いほうのエログロ、SF色、アウトロー色を受け持っていた。ちなみにみやびつづるなんかは、ドルフィンでのデビュー当時は、まだ熟女の臭いはほとんど感じられなかった。個人的に思うドルフィンの黄金期は田嶋安恵が出てくる前後くらいまでだ。
 快楽天と同じくらい、巣立たせていった作家のレベルの高さと多さは、評価されてよかったエロマンガ誌の一つだといまでも思っている。


DOGMAN SCRAP (メガストアコミックス)

DOGMAN SCRAP (メガストアコミックス)

参考:博内和代・世棄犬ファンサイト -dog days-