「監督10周年記念 大地丙太郎、語りまくりっ!」③

 昨日の続き



 3人目のゲストで「りりか」のりりか役以来、大地監督と長い付き合いの麻生かほ里氏が参加。麻生氏が最近ご結婚されたことが、大地監督から紹介される。「(安原)麗子のときもショックだった」「誰も恋愛の相談をしてくれない」(大地監督)と嘆きが入る。長い付き合いの麻生氏に安心したのか、はたまた酒が回ってきたのか。このへんで交わされたトークは、アニメと直接関係ない話ばかりに(笑)。

  • 確定申告が大変。会社にしてしまえば楽、と小黒氏がススメる。何度か提案してるけれど、奥さんに却下されてるらしい?
  • 最近の大地監督、一人でいる時間はさびしがりやらしい。「さびしいに酔ってるかも」。エノケンなどの喜劇王の孤独話が引き合いに
  • 麻生氏は「りりか」終了間際、長髪+キャップ→髪の毛の房を後ろの穴から「馬のしっぽ」にしてた当事の大地監督から、イメチェンを頼まれて2回ほどデパートに付き合った。「お金はどうでもいいから、にはさすがと思った」(麻生)。話の最中、もくもくと焼きそばを食べる大地監督
  • 「そこからどんどんオシャレになっていって、名前も売れて露出も多くなっていった」(麻生)。あとで、音響監督の田中一也氏にも、コーディネートを頼まれた


 再び「こどちゃ」の話へ。
 「こどちゃが一番きつかった作品」「特に2年目」「何度もやめよかうかと考えた」(大地)。テレビの話が、原作からどんどん離れていって、でも周囲やファンには受けいれられる状況をなんとか戻したいと考えていたとのこと。えらい人から「呼び出しがくるたびにやめる言い訳を考えて眠れなかった」(大地)。でも、単なる業務連絡とかなんでもない直しのお願いで、「そんなのいくらでもやるよ!」(大地)と内心でホッとしてた、と。「フルーツバスケット」でも辞めたいと思ったときがあったそうで、けれど「『こどちゃ』の時よりは荒れてない」と言われて、踏みとどまったと話す。


 「こどちゃ」「おじゃる丸」の次のテレビ作品で、個人的に第2次大地ブームを自分におこした「今、そこにいる僕」は、「かなり冒険だった」(大地)。
 「今、僕」はオルフェの倉田英之氏が一人で全話の脚本を担当したアニメ(翌年も「まりんとメラン」で全話脚本をやっている)。大地監督は「倉田クンの作品でもあった」と語る。主人公のシュウは当初、「踊る大捜査線」の青島刑事がモデルだったとのこと。結局。まるきり違うキャラクターになってたけれど。

  • 毎回のシナリオ会議は、倉田氏があげてくる脚本に「面白いね〜」というだけで終わってた
  • それだけ脚本がすぐれていて、“倉田作品”としての色が濃かった
  • 6話の、自分をレイプした男を殺してサラが監禁から脱出する回が一番やりたかった

 「報道で知った、ウガンダの少年兵やレイプがショックだった。自分は公園で昼間、子供をあそばせているのに」(大地)。そんな気持ちや、日本のアニメの多くが無批判的に戦争を扱ってるおかしさなどを、シュウという過酷な未来に飛ばされる主人公に託したと語る。

 このイベントで個人的に一番聞けてうれしかった話として、「今、僕」のシュウに託した思いが「レジェンズ 甦る竜王伝説」のシュウにもまた別の形で託されていたこと。

  • レジェンズ」は当初、2番煎じ3番煎じといった感じのつまならいモンスターバトル物の企画だった
  • 企画段階で決まっていた主人公の名前はケン。でも、アニメでいかにもよくある、普通にカッコイイだけのダサい名前なので、「今、僕」で使ったシュウなら監督をやると提案したらOKされた
  • 「今、僕」でシュウを演じた岡村明美氏を「レジェンズ」でも起用するようセットで提案した。で、そちらもOK
  • 企画を一度崩すのに、シュウが必要だった。だから、「レジェンズ」は「今、僕」の再構築でもある。どちらのシュウにも、自分が投影されてる

 イベントの日の前々日にあった「レジェンズ」最終アフレコの打ち上げは、そんな思いを託していたことや、安原氏や齋藤さんや麻生氏とは違って職業声優の岡村氏と1年仕事をまっとうできたこともあって、うれしい打ち上げになったと話す。



 いい話の後は、少々泥臭い話に(笑)。
 原作者は口を出さない約束だったという「フルーツバスケット」で、脚本段階での注文がきつかった話。「脚本は叩き台であって、そこから絵コンテや撮影の作業が入って変更はあるもの」(大地)。途中から原作者の注文は、シャットアウトしてしまったそう。「フルバ」を監督作品として積極的にプッシュしないのはそのあたりの事情があるようだった。「でも、海外では『フルバ』が人気。『今、僕』も人気が高い」(大地)。
 
 続いて泥臭話。途中降板のあった「あたしンち」。次にプロデューサーから文句がきたら切り出そうと決心していたところ、「4話で文句がきてやめた」(大地)。プロデューサーを前に、やめることをいよいよ切り出そうとしたときに、その場にいて事情を理解している長濱博史氏に一度止められたことを、「あいつはえらい」と話していた。
 
 降板した大地監督のあとを、師匠と仰ぐやすみ哲夫氏に引き受けさせる形になってしまったことに、申し訳ないという思いでいっぱいのまま1年ぶりくらいにやった会えたとき、にこやかに「大地がやってくれた後だから、楽だよ」と言ってもらえたと当事の感激が熱く語られる。「普通、言えないよ? そんなこと」(大地)。「あたしンち」は見てないからわからないんだけれど、大地監督が担当したわずかの回でつくられた演出パターンを、いまだに使ってもらっていることにも、話のなかに感謝をにじませてた。


 「十兵衛ちゃん」について。
 「完全に娘と俺の話です」「一度閉ざされた親子の壁を回復していく過程がやりたかった」(大地)。これも放映時のことをよく覚えていないが、そのことがよく演出できたシーンとして割り箸(?)のシーンをあげていた。「現実は厳しいから、父親の彩のような行動はできないけれど。理想です」(大地)。
 2本目のシベリア柳生編をつくる気は始めはなくて、出版社でマンガ続編の話が持ち上がったのが、最初のキッカケになったと話す。
 でも、当然ながらその当事はもう、「小西寛子が起用できなくなっていたから、2はできないと思っていた」(大地)。そこへ「『フルバ』で堀江 由衣にあって、すぐマッドハウスに企画をもっていった」(大地)。
 けれど、堀江 由衣はキングレコード。「1」はバンダイビジュアル。堀江 由衣でいくならキングで話を進めるべきだろうといことで、そのあたりは考えていたよりすっきりいったらしい。このバンダイV→キングが早々に決まったことは「ラッキーに働いた」(大地)。



 (このあたりで、すでに予定終了時間の21:00を過ぎる長丁場になってた。少々疲れもあって麻生氏がいつ退場したか、もうよく思い出せないんだが、多分このあたり)



 ここからは非一般流通アニメの話に。
 「りりか」を始める前に手がけた、宮崎県依頼の広報ビデオ「大淀川危機一髪」を上映。大淀川が氾濫しないよう灌漑工事が大切ですよ、ということを子供向けにアニメで教育する内容。
 現地までロケハンに行って戻り、作業を進めていたところ、ある時期から音沙汰がなくなって、制作会社に確認をしたところ、「台風で大淀川が決壊してアニメをつくる予算がなくなってた」(大地)。その後、また企画が動き出して、1週間でキャスティングしてくれという話がきたり、慌ただしい作業になったよう。
 内容は、

  • 主人公の男の子が近づいてる台風を心配しながら就寝
  • 夜中に起こされて、ヘリで巨大ビルへ。いきなり「大臣」職に
  • ポイントの割り振られたダムや貯水施設などの灌漑工事のなかから、限られた持ち点数のなかで、効率よく水害を防ぐ仕事を任される
  • 途中までは水害を防ぐけれど、結局、水害に飲み込まれる
  • 夢オチ→おねしょ。「もっともやってはいけないオチです」「ようは工事するにも金がかかるということを言いたいわけですね」(大地) 

 この河川氾濫抑制広報ビデオは、荒川で、「レジェンズ」のキャラクターを使って1本つくられたと話してれくた。そのビデオを監督したスタッフから指示を聞かれて、「世界観が壊れなければいいと答えたけれど、ニューヨークに住んでるキャラクターが荒川にいる時点ですでに壊れているって」(大地)と大地監督が自分でウケてた。

 ほかに、「宮ヶ瀬ダムマン」という同じく治水広報モノの行政アニメを上映。ダムマンがダムキックやダムパンチで、洪水の怪獣を撃破する。もうダムである意味がない。


 トリの企画として、イベント用に1週間かけて仕込んだという「一度も見たことないんだけれど」(大地)というガンダムの自主制作アニメを上映。タイトルは「機動線ガンダム」。
 文化庁メディア芸術祭のシンポジウムで会った富野監督のすごさに打たれてガンダムに決めたとのこと。
 「まかせてイルか!」が優秀賞をとったアニメーション賞の審査員だから、あいさつしないわけにはいかないと受賞パーティーで富野氏のところへ行ったところ、「あー、僕はね、キミだけにはあいたくなかった」(富野)と言われたというシチュエーションを、富野氏のモノマネで実演してみせる(笑)。まあ、富野監督のセリフだから、もちろん言葉通りの意味は半分も含まれてないわけで、細かいニュアンスは想像してください。大地監督がホームページで3/5付けで書いてるとおり(http://www5c.biglobe.ne.jp/~akitaroh/diary/diary02.html)富野監督への尊敬の念はちゃんとうかがえた。

 「機動線ガンダム」は、

  • 「燃えあが〜れ〜♪」の部分をリピート
  • リピートの始めで、大地監督作画のうろ覚えガンダムが走ってきて、たとえば、おっぱいの写真につまづいて転ぶ。以下、繰り返し
  • 「藍より蒼し」とか、イベントで撮ったガンダムの写真とか、富野監督の顔とか

 「『燃えあが〜れ〜♪』だから、萌えで」(大地監督)「藍より蒼し」の説明が非常にウケる。


 このへんで、「くろみちゃん2」のめでたい発表も。
 ただ、フライングっぽいかな?と酒の入った大地監督がためらいながら話してたことなので控えるけれど、4月初めくらいまでには表に出てきそう。というか、このイベントから帰った後、「くろみちゃん」「くろみちゃん2」のDVDをネット通販しようとしたら、「くろみちゃん」だけ意外に品薄で割引率の高い店を探すのに手間がかかった。発表が公になったらもっと在庫が少なくなりそう。

 現在キッズステーションで放映中の「ギャグマンガ日和」の話。
 「最近の作品では、『十兵衛ちゃん2』、『まかせてイルか!』と並ぶベスト作品」(大地)と大プッシュする。

 終了も近づき今後の予定について。
 今年は、少しお休みをもらった後、実写Vシネマと少女マンガ原作物の準備を始めるとのこと。「ギャグとチャンバラを中心にしていきたい」(大地)。
 それと、「十兵衛ちゃん2」で組み、「2」は実質的に自分との共同作品のように考えているという長濱博史氏のことを、応援してほしいとアピールしてた。長濱氏が10月新番で監督デビューするとのこと。



 23:00、閉会。