少年シリウス 12月号
先月号まで数ヶ月のシリウスを「新陳代謝が低下している」なんて書いてた自分がバカみたいだ。
やられたやられた! 諸手をあげよう。とんでもない新作ラッシュ。そうだわ、そーいう兆候が休刊の兆しでないなら、フツー何かふつふつと企画を練っていると考えたほうが素直だわ。しかし、それにしても怒涛である。1月号から3月号までに新連載が3本、読切が6本と合作っぽい企画モノが1本。1月号の新連載1本を除いた作品はホラーマンガ特集「真冬の怪奇宴」のタイトルで、恐怖というくくりからシリウスのテーマであるファンタジーを追求したシリーズ。
- 1月号
- 3月号
創刊以来初めての大型企画。3月号以降の予定で、連載か読切が不明だが志村貴子、尾玉なみえの名前も。
新連載を始める押切蓮介は、シリウスHPで7月中頃からアシスタント募集の告知が出ていたので、「真冬〜」の企画はそのあたりから進めていたのだろうか。押切一人の予告露出が、ここまでの広がりを背後に隠してたとは。
注目は、木静謙二の一般進出。改めて考えると、劇画調でちょっと暗めな印象のタッチはホラーに合う。エロマンガもやってる作家の連載は、シリウスで越智良彦=あじす・あべばと石川マサキ=ひぢりれいの二人がいたが、ペンネームを変えずに登場するのは木静が初めて。その後には、二人目として綾坂みつねが続く。なんとなくヤンチャン烈やREDからも声がかかってるんじゃないかと想像していたが、原作付きでも少年誌のシリウスでやってくれたほうが嬉しいので、楽しみ。
中村恵三郎、瀬川サユリ、零一、山久は新人賞出身作家。山久は今月号に入賞作品が掲載。HPで零一と二人の作品が読める(http://www.sirius.kodansha.co.jp/nw4_1/index.html、http://www.sirius.kodansha.co.jp/nw4_2/index.html)。
ファウスト繋がりと思われる竜騎士07の原作は、例の「ひぐらし」と同じ舞台を原作にしてる。客寄せには最高だ。野沢ビーム(http://www.manga-gai.net/_note/manga/eiyu/new/0001.htm)という作家の実力は未知数だが、それなりの勝算あってのことであって欲しい。「銃姫」のような見切り発車ではありませんように。さすがに「銃姫」も成長が見え始めてはいるのだけど、まだまだなので。
ファンタジーの中でも「熱血」「剣と魔法」「バトル」「メカ」なんかを主に追ってきたシリウス。言われてみれば「ホラー」はなかった。「怪物王女」「テレパシー少女 蘭」がそれっぽいテイストを漂わせてはいたが、区分けしろと言われれば「バトル」と「超能力」に分ける。「ホラー」は「ホラー」でサスペリアとか(それくらいしか知らないんだよ!)確固としたジャンルがあるから、シリウスが踏み込んでくるとは全く思いもせず。
けど、ところでホラーマンガって小学生や中学生や高校生の男子が読むのか? というのはある。地味だ地味だと言われ続けてじゃあ地味を極めてやろうじゃんと自棄になったんでもなかろうが。案外、読まないもんじゃないのかね……。怖いから。単純に。女子は小学生くらいからフツーに読んでらっしゃるけど。なんであの娘はウメズカズオの「半漁人」なんかを学校にもってきたかな。名作は名作なんだろうけど。トラウマですよ、こっちは。植えつけられましたよ。「はだしのゲン」だって、小学生にはある意味、ホラーだったわけよ。溶けた皮を指先からぶら下げてガラスの破片が体中に刺さった被爆者の絵とか。つーか「まことちゃん」さえ怖がってた自分が怖がりすぎなのか? サバラー!
あれ? シリウス読者の女子比率ってどれくらいなんだろ? 年齢と地域構成しか分からない。仮に、女子読者が半分なら、まったくアリな企画なのか。あるいは、読者の6割以上が20歳以上という少年誌っぽくない層だからこそできる企画なのか。でも、チャレンジャブルなシリウスは歓迎。創刊号に見た熱気をもう一度見せてくれるか。
あと、見事な散り方を見せてくれた「ゴウジン」全2巻広告にかぶさってる「現在、秘密プロジェクト進行中! 発表を待て!」って何?
♯
「怪物王女」(光永康則)
時間早送りの記憶の中の村で、連続殺人事件を追体験する王女とヒロ。こーいう話を1話完結でやってくれるのが、この作品の最大の魅力。姫の中性な性格設定が、どんな話にもうまく嵌り、ストーリーを締める。
「Dear Monkey 西遊記」(白井三二朗)
「こっばやるけん」。師匠が監修したのかな?
巻中カラー「龍眼」(藤山海里)
雪村が妹の死の真相を知り、カヅマとの遺恨解決。当事者から直接話を聞いたからとはいえ、遺恨が誤解だったことをこの1話で納得させちゃったのは、雪村がちょっと単純な人間に見えやしないか。それとも、やっぱり根はいい人だったってことで、人気出るのかなぁ。
「ソウルメイトツーリスト」(作画:ふる鳥弥生、原作:根本新)
初めて真理子が自分から積極的に行動。最終的に代理店の仲間の助けを借りることになったものの、絆を深めることが出来ましたというまとめは後味よし。もう1話くらいひっぱって、悩む真理子を見たかったかも。
巻中カラー「スターゲイザー ロボとうさ吉外伝」(加藤和恵)
ほんと、完全に仕切り直したな。
通称「ボム」と呼ばれる謎の宇宙モンスターの群れに襲われている太陽系。攻撃すると爆発してしまう「ボム」を爆発させずに退治するロビンとうさ吉のコンビのお披露目な回。前作までの迷いをまったく感じさせない爽やかなロビンは、振り回されていたネジを能力発露の道具として使いこなす。芯の通った生意気小僧という印象に変化。話全体もすっきり分かりやすく。もう、あれこれ言わず「スターゲイザー」として楽しめ。「ロボとうさ吉」を読んでおく必要はない、まったく別の作品として。
第4回新人賞入選作「ADAPT1%」(山久)
「19歳とは思えない画力」という選評。いじめられてる少女、体育の時間中に教室から消えた財布、少女を助けるロボ娘。手堅い内容。個人的には、倉橋ユウスを入選させた、あの冒険具合が好きだったんだけど。まぁ、こちらはこちらで有望そう。
最終回「もえちり!」(堂高しげる)
娘が生まれたばかりなのに……。いまいち弾けきってない。体を張ったネタが身上の作者だけになおさら心配に。
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/10/26
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