「DQⅢ」の住人を救うには。

① 新しい世界観の導入

たとえば「巨大な円筒の表面を流動する大地」という世界観を提示する。「円筒」の厚みと丸みと円周を拡大していくと、ドーナツ型(トーラス型)コロニーに近づいていく(正確には、ドーナツの中心を軸とした回転をしないので、シリンダー型コロニーを複数連結させてドーナツ型コロニー状を形成したものになる)。
「表面を流動する大地」の実現には、通常のドーナツ型コロニーのように円筒の内周壁を大地とすることは選択できない。円筒の外周壁が大地でなければならない。しかし、それでは大気を逃す。
大気を逃さずに閉じ込めておくため、外壁を2層に分け、1層と2層の間の空間に大気を循環させて、そこを居住区とする。1層を真空と接するもっとも外の壁とすると、2層の外周壁を大地とすることになる(安全確保のため層の数を増やし4層や5層の外周壁を大地とすることも考えられる)。
問題がまだ残る。通常のコロニーは、慣性によって1層の内周壁に擬似重力を発生させるため、2層の外周壁を大地とした場合、“人が空に墜落していく”現象が生じる。その解決に、1層の内周壁に働く慣性の力を、2層の外周壁で働く引力に変換する重力制御の技術が不可欠になる。
これらの技術的な課題をクリアしても、住人が、スペースコロニー居住という新しい世界観を積極的に肯定できるかどうかは、心許ない。一方で、1層外周壁という「端」を生み出すことで、「端」の外の世界の想像を許すことができる。想像は創造につながる。