ヤングガンガン 22号・23号・24号


 やー、さぼってる間に1周年。雑誌が1年もったことに肘から先で小さくバンザイ。


 実物日記的ヤンガンとの歩みはこちらでも参考にしてもらうとして、妙な下敷きにひかれてたまたまセブンイレブンで購入したスクエニ初の青年誌+マンガ業界久々の隔週刊誌。1年付き合ってみたわけだが。



 1年間を振り返って、もっとも変化が大きかったのは、やはり、青年誌の中で見てヤンジャンと同じくらいにまでアイドルグラビアの比率を高めたこと。そもそも最初は連載マンガが表紙だった。グラビアが始まったのは8号からで、これは明らかに中途の路線変更。
 ヤンジャンと違うのは、質より量、名前が売れてきたアイドルよりは(多分、ギャラの安い)まったくの新人の起用が多いこと。巨乳から微乳から、ハイティーンからローティーンから。次第にグラビアの袋閉じや別冊がつくようになったり、コスプレもどきシリーズや人気投票コンテストの定期開催が始まったり。
 マンガ読みとしては、そういうやり方で実売部数の確保に熱をあげるよりは、その予算を作家の育成起用に回して欲しかった。自分が見て回ってる範囲のマンガ読み系サイトで、単行本の感想はまだ見かけるものの、毎号の定期的な感想をぽつぽつしか見かけなくなったのは、グラビアはいらないということなのではなかろうか。
 が、「萌えてはいけない。」でいしかわじゅんがマンガ誌のグラビア効果について語っていた「1〜2万部は増える」が本当なら、そりゃ力を入れないわけにもいかないのだろう。



 一方で、グラビアがいらなくても、欲しいマンガが数本でもあれば雑誌を買うのがサイト持ちのマンガ読み(のはずだろ?)。じゃあ、そのマンガはどうなってるのかというと。


 連載作品は、単行本発売でとろ火がついた「すもももももも」が柱ということになってるらしい。2歩ほど遅れて「黒神」「ユーベルブラッド」、さらに2歩ほど遅れて「マンホール」「ニコイチ」という感じ。*1
 らしい、というのは、創刊当初から柱にしようとは思ってなかったろうから。創刊号で表紙を飾った2作品は、「ロト紋」が低空飛行中。韓製「FF11」マンガが早々の討ち死に。かつての人気作の続編、スク・エニお家芸のゲーム原作マンガを二つとも外したのは、相当の番狂わせだったはず。そういえば、「化野之民」の実質リタイアもあった。「すもももももも」のプッシュとグラビアに力を入れ始めた時期がほぼ同じ頃、というのも路線変更を印象づけた。
 それ以後も、グラビアにかまけて「すもももももも」以外のストーリーマンガを柱に育てようとしていなかったわけではなくて、新連載や集中連載はいくつもあった。けれど、結果的に育ってきていない。とろ火がついていない。厳しめだが、「すもももももも」のプッシュは、今のところほかに柱になるマンガがないから、と言ってもいい。


 もっとも、ストーリーマンガ以外になると話が違う。萌え系レストランバイト4コマの「WORKING!!」は、ヤンガン読者層の大半がお目当てにしている。単行本が発売されたばかりなので、また新たなファンを呼び込むだろう。これを、町内会ギャグの「天体戦士サンレッド」、河川敷ギャグの「荒川アンダーザブリッジ」が追うカタチ。*2すもももももも」も最近は格闘色を色濃くしてきたが、単行本の既刊分はちょいエロやツンデレ要素で人気になった。



 今のところ、良くも悪くも"軽め"のマンガが読者に受け入れられてるというのが現状。内容がハード目な話、絵柄は、最近だと「Slead Head」や「死がふたりを分かつまで」などがあるが、定着してきているという印象は薄い。


 創刊の2カ月前に同じ隔週刊のヤンマガアッパーズが休刊してたこともあって、もちろんカラーは違うだろうけれど、また、楽しみにできる隔週刊誌ができていくのかしら、という期待は、1年経ったところで満たされていない。そう期待していた自分のような読者からは、ズレていった。「BAMBOO BLADE」なんかの個人的ヒットはあったけれども。



 さて、2年目。1年間はここまで書いたような感じだったわけだが、明日出る24号までの3号分で、また新しい動きも出てきている。

 次号の新年1号は、21号振り(http://d.hatena.ne.jp/bullet/20050122#p1)で読切「解錠ジャンキー・ロック」が連載スタートする山田秋太郎。読切そのものには、山田の実力からすると迷走を感じたが、今のヤンガンにあまりない明るい熱血ストーリー展開は期待できそう。
 24号は、「FF11」マンガの作画担当リベンジなるか?の、日本原作+韓国作画で巻頭カラー・クライム"ブレード"アクション「JACKALS」が連載開始。23号からは、スク・エニゲームが原作の戦場ロボットモノ「FRONT MISSION 〜THE DRIVE〜」がスタートしている。



 「JACKALS」の原作は、短編読切「デアボリカ」が山田の「解錠〜」と同じ3号、それと9号(http://d.hatena.ne.jp/bullet/20050418#p1)に載った新人賞出身の村田真哉。作画が、創刊号で表紙・巻頭カラーの「FF11」マンガを担当→3号(創刊号から数えると4号)でいきなりの長期休載告知(http://d.hatena.ne.jp/bullet/20050122#p1)→12号でまたいきなりの再開予告→18号で正式にやっぱりダメでした告知(http://d.hatena.ne.jp/bullet/20050912#p1)という不遇にあった、韓国作家のキム・ビョンジン


 24号からは、「新暗行御史」の尹仁完梁慶一コンビの読切前編「Let's BIBLE!」が始まっている。来年まで休載の「黒神」を含めると、韓国作家の起用がどんどん進んでいる。
 「FF11」マンガの失敗は、作品レベルのどうしようもなさ以外にも何かごたごたがあった?ような雰囲気を感じたが、それはともかく、一度は失敗したキムをまた起用してくれた編集部の判断は歓迎。「JACKALS」を読んだ限り、「FF11」は原作が悪かったらしい、という結論に達した。まだ、コマの流れ方がすんなりいかなかったり、作画作業の部分で粗が目立つところもあるが、クリンゴン星人の武器に似た持ち方をする大型の剣でざっくり行く山場はかなり盛り上がってる。ほかに有望そうな作家がいれば、どんどん韓国から連れてきて欲しい。


 「FRONT MISSION 〜THE DRIVE〜」の原作は、幻の旧エニックス青年マンガ誌バウンドでペルー文明系巨神兵マンガ「ボロブドゥール」を連載していた太田垣康男。studio SEEDの作画は確かにハイレベルだけれど、読みながらどこか傍観するようになってしまうのは、ロボットモノなのに格闘無しの撃ち合いだけだから? コマは全部、PC上で一つずつ完成させて、切り張りしてんだろうなあ。どことなく不連続性が感じられる。まだ様子見。


 こっちも(一部の読者的に)大事なグラビアは、次号でアイドルDVDが付録に。そういえば、創刊号と創刊2号は、スク・エニ系ゲームのデモムービーなどを収録したDVDがついてた。そう考えると、創刊初期に登場した山田や「FF11」マンガの作画担当が戻ってきたり、またゲーム原作マンガが始まったり、なんだか一回りしてる?



 というか、太田垣の登用はある意味、先祖がえり。

*1:このランキングは、ネットやオタク誌等の評判などを参考に推測したもので、自分の個人的評価とは若干異なる。

*2:上に同じ。