コミックレックス 創刊号


 一迅社から新たな月刊マンガ誌。とらのあなで限定小冊子がつくというので早売りの購入を控えていたため、今日付けの感想である。自分の目当ては、ゼロサムWARD移動組みの高遠るいと、ファン暦がエロマンガアワーズときてる鬼魔あづさ。他の作家はほぼ初見といっていい。



 ファーストインプレッションは、寄せ集め感。



 構成は、WARDからきた高遠、藤枝雅結城心一など移動組みが1/4、合併する前の旧スタジオDNAのゲーム系アンソロ作家が2/4、ほか1/4(ゲーム原作マンガや新人賞作品)といった具合。


 WARD移動組みのマンガは途中開始だし、アンソロ作家や新人賞出身作家は知名度が低い。女性向けのゼロサムとは別の読者層(おそらく10代、20代の男性)を掴もうと考えているにしては、ちょっと一見のマンガ読みが入りにくい。
 下敷きと藤枝の「ティンクルセイバー」未単行本化分の小冊子がついて500円は安め。けれど都内で見た限り、複数の書店は平積みにはしても付録のせいで輪ゴムが掛けられており、手を出しにくくなっている。


 ゲーム系アンソロをまったく未開拓分野にしている自分にとって、そちらで活躍している作家のオリジナルマンガが読めるからレックスを買おう、というファン層がどれだけいるのかは、見通しがつかない。


 事前に発表されていた峰倉かずや大森葵石田あきら佐野タカシといった目玉作家の掲載が、どういった事情が知らないが3月号(2月発売)以後になってるのは、スタートダッシュの面でかなり痛かろう。バンチで人気だった「がうがうわー太」の続編は、かろうじて次号連載スタートの予告マンガがついた。


 逆の言い方をすれば、号を重ねていけば人気作家が順次、登板してくるということで、尻上がりに充実させていくのかどうか。
次号の創刊2号はまりお金田結城さくやの連載がスタート。読切「ハズレ龍姫伝」が掲載予定の村雨リョウは、数年前から同人で注目していた作家。本を買うたびに女子の体型が膨らんでいくのをちょっと気にしていた。もうちょっとスリムになっていてくれてるといいんだが……。
 春に藤沢とおるが登場。レックス的読者層に向けた作品は、ヤンジャンで短期連載した正義の味方モノ以来か。これはかなりの予告効果。
 3月号から「鬼ごっこ」のタイトルで連載予定の黒柾志西は、これはベンジャミン? それに、創刊記念サイン色紙プレゼントの作家のなかに、富樫が混ざってるのも、期待させる伏線。



 雑誌全体の勢いは(例えば少年シリウス創刊の時ほどは)感じられなかったが、個別の作品には見るべきものがあったというところ。



参考:株式会社一迅社 ComicREX WEBサイト






「シンシア ザ ミッション」

 先月出た2巻から丁度繋がった話で再開。香港から暗殺スキルの使い手3人が送り込まれ、シンシアたちとご都合主義的に偶然遭遇。知らないうちにチクっと初弾命中されたシンシア。
 ……この展開は、グラップラーから無印バキにリスタートした時の!
 日本刀で食らった袈裟切りの傷跡が残った喧嘩番長。高遠らしい。
 作画ミスのほかネタバレがあるようなので、これから読む人は気をつけたりつけなかったりしたほうがよろしい模様。
 それにしても、応募者全員サービステレカ絵柄のシンシアがいつにもまして禿げ過ぎ。これじゃ凶暴な一休さんだよ……。

「みてぐら」

 アワーズの連載が終わってから、きちんと追いかけてなかった鬼魔あづさ。個人的には久々の連載ということになる。
 巫女少女と幼馴染で霊が見える少年。ちょいエロもありつつ、周囲で怪しい霊の気配。うんうん、と読み進めてたところに、外で原爆が落ちたかのように教室のガラスが砕けるシーン。「目っ」「目が」「目がー…」。スピルバーグか。

「蒼海訣戦」

 作者は納都花丸
 猫耳尻尾ショタが海軍学校で成長物語という導入は、数ページを読んだところまでは、あざといなぁ……、と思っていたのだけれど、読み進むにつれて、これは新連載の中で一番本気度がうかがえるな、と改めた。この作品が創刊号に載っていたことで、次号以降も買おうという気になった読者はかなりいるはず。
 民族的マイノリティという要素に置換した猫耳尻尾属性を、それにこだわらない義兄弟との信頼と、海軍学校生活の中で克服していくべき障害の一つとして、うまく見せている。また、今回の話では女性キャラが猫耳尻尾ショタのお婆さん以外に出てきてないが、それでもいいかなぁ、というくらいに自分の隠れたショタ感性を揺さぶる絵柄もよし。

ろりぽ∞

 作者は仏さんじょ。メイド至上主義はギャグでももういいや……。

「ひめなカメナ」

 結城心一の新連載。デコに角型絆創膏を貼った生物部眼鏡っ娘委員長がハートをヒット。貼った、を変換するとき、張った、の用法の一つで出てきた「テントを張る」にもなぜか反応。

「たなかは」

 作者はこれがデビューの田中淳一。新人賞の出身でもなく、創刊号で連載デビュー、題材がマンガ家の志望の若者(つまり半分ノンフィクション)の日常って、いろんなチャレンジャブル要素が混ざり合ってるなぁ。
 この手のマンガは、舞登志朗のやってたやつがTV企画も絡みながら結局ポシャったり、今なら山田タヒチがWEBスピカでやってるやつがすでにあったりで、新人が手を出すのはちょっとリスキーではなかろうか、とも。それこそ、この作家の成長やマンガ家人生がどう転んでいくがそのまま作品の質に反映してくるのだろう。読みは継続、判断保留。

「Dear Emily...」

 作者は瑚澄遊智。ちょっとしょっぱく、全体ほのぼの。基本、何にも起こってない話。絵柄だけで楽しめる、というほどでもなく。次回は何か起こしてくれる?





 しかし、キーワードをつくってみたものの、本命だと思っていた「コミックレックス」より「ComicREX」のほうが使用率が高い。字面なら「コミックREX」のほうがかっこいい?