ヤングチャンピオン烈 創刊号

烈 創刊号



 一見すると、ヤングアニマル嵐をやろうとしている、と思える。


 増刊である2誌とも、柱の作品は、中綴じ・隔週発行・コンビニ売りする本誌の看板作品の番外編。*1 烈は、柱が1本だけでは弱いと踏んだのか、週チャンで「エイケン」をヒットさせ現在「ゾクセイ」を連載中の松山せいじの新連載「ヤンほぼ」との2本立て。*2 巻頭がアイドルグラビアなのも本誌、増刊で同じ。*3 嵐は今は月刊発行だが、昨年までは烈と同じ隔月ペースだった。そして、エロマンガ家の登用が目立つことが一番の共通項。*4



 よって烈を買った自分が、嵐を買っていておかしくないはずだ。が、実は立ち読みをしたことはあっても、購入したことがない。現在発売中のものを改めて立ち読みしてみたが、やはり購入意欲がさほど湧かない。*5 烈は次に出る号も買ってみようと思わせる。


 購入意欲の有無という点から、烈と嵐の差異を考えてみると……。


 エロマンガ独特の熱、になるのかなと思う。


 嵐に掲載するエロマンガ家は、内容を、より一般向けに、なるべく多くの読者に受けそうな筋立てにしようとしている努力が透ける。うまくまとまっている、良くも悪くも。
 烈は、創刊したばかりだからか、作家個人のフェティッシュな嗜好が作品からまだ受け取れる。まとまりきれてない印象は、そこにエロマンガ誌でつちかってきたそれぞれの癖、背景を見る楽しみと入れ換えの関係にできる。購読者を増やす方向にほとんど貢献しない読み方なのは承知する。けれど、そういった自分のような手合いをニッチに狙ってきているような気もする。


 コンビニの雑誌を売り場を見れば、成年マーク付きマンガ誌は、無粋な白ベタ・黒ベタで性器がまったく見えず、小口シール2箇所止めでページを封印、立ち読みが不可。メジャー出版社が出す青年誌はエロに限界がある。
 そこで、小口シールで封印するほどではなく、けれど一般青年誌と比較すればそこそこエロ成分を満たし、嵐ほど一般向けにまだ馴染んでない現役エロマンガ家を引っ張ってきたのは、それなりに隙間に合わせてきたな、というマーケティングを窺うのだ。
 ネットでちらほら見た中には、他のコンビニ売り雑誌やマニア誌と「差別化ができてない」という厳しい意見もあった。ニッチを狙いすぎて外してる、という指摘も確かにできると思う。が、エロマンガファンの自分としては「ありそうでなかった」という甘めの評価で烈創刊号を締めておきたい。





 個別作品の感想に入る前に、今回の評価に繋がる極々個人的な動機。読み飛ばして構わない。



 エロマンガ家の扱いを大枠にとらえた話をどうしてもしてしまうのは、ファンという要素のほかに、創刊当時のヤングガンガンに抱いていたある種の期待がある。



 前にヤンガン10号の感想を書いた時、簡単に表にまとめていた *6のを参照してもらうと、創刊当時のヤンガンは、月野定規瀬奈陽太郎に短期集中連載で、LINDAに前後編でちょいエロの入った作品を描かせていて、これが個人的にいたくお気に入りだった。マンガとしての質は決して高くなかったが(特に人妻にしか見えないLINDAの女子高生なんかは)、月野や瀬奈はエロマンガ時代にエロ以外の部分、登場人物の掛け合いやちょっとした小ネタにくすぐられる非凡なトコロを感じていたので、エロという装飾を過剰に必要とされないフィールドを与えて、どういうマンガを描いてくれるのか期待しながら毎号を読んでいた。
 でも、繰り返しになるが、マンガとして手放しで面白かったというとそこまではなく、自分のようなファンなら秀作認定するという程度。で、この二次元お色気路線が不人気だったせいかのかは分からないが、エロマンガ作家の登用はもうなさそうだなぁと思い始めた頃、唐突にアイドルグラビアが始まり、今ではDVDまでつく始末である。青年誌とはいえ、誌名に入っているガンガンというブランドの壁があったのかもしれない。



 この当時の期待を、いい線で満たしてくれたのが今のところの、烈なのである。






表紙・巻頭カラー「恋愛ジャンキーSS」(葉月京

 求められている仕事をきちんとこなしており、それ以上のものはない。まことにソツがない。


読切「あいの詩」(道家大輔

 ヤンサン、ヤンチャン、REDの3誌でマンガ化された電車男のヤンチャン担当。3誌の中では、ヤンサンの原秀則版の評価が一番高いらしい。RED版はしょうもない誤掲載や打ち切りで話題になっていた。なので、道家版の電車男の評価は耳にしてきてない。というか、この作家の作品を初めて読む。
 "友人の彼氏を好きになってしまった女子高生だったが、実は……。"オチに意外性はない。絵柄からどうしても上條敦士を頭に思い浮かべるので、そうすると吹き出しの多さが気になる。あと、おそらくNANAってこんな感じ? 読んだことないけど。


「僕と彼女のホント」(みた森たつや

 隣に住む幼馴染で金髪ハーフでHカップの女子大生=メグ姉に家庭教師をしてもらうことになった男子高校生はモンモンとしてたまらないので生乳に顔をうずめさせてもらいましたとさ。
 うずめた姿勢から見上げたHカップの向こうで真っ赤になって絶句する姉顔がエクセレント。男の純情とか素直さに「かああっ」となる女性の可愛さ仕草を描かせたら一品であるな。創刊号の最優秀選手賞。
 現在執筆の舞台にするメガストアでは、以前に比べてエロてんこ盛りストーリー控え目になっており、それはまったく正しくかつよろしいのだが、一方でお話重視の「さらく〜る」のようなマンガもまた読みたかったので、タイミング良し。


「ピンクDEピンク」(東鉄神

 桃姫でよく見る作家。
 除霊の失敗でクラスメイトにとり憑いた巨乳エロちゃんがSEXしてくれないと成仏できないと迫る。かっちりした絵柄。乳柔め。クラスメイトがペットにする雀の設定がいまいち消化しきれていなかった印象。1話目らしい1話目か。


読切「オオカミ少年の恋」(Cuvie

 エロは純愛果実、一般はエイジで活躍中。この面子の中では葉月と松山の次に名の知れた作家だろう。
 お話はタイトル通りといった感じ。オオカミ少年に嫌われたくないがために、信じる振りをし続けていた彼女の気持ちに気付いた彼女の部屋で、タイミングよく親父乱入。これがエロマンガなら、そのままヤってたのだろう。ラストのコマで彼女がつぶやく「嘘つき……」が、あまり余韻をともなわない。オオカミ少年の描写が単なる身勝手な未成年に思えてしまうからだろう。採点△。


巻中カラー「ヤンほぼ」(松山せいじ

 グラップラー時代の刃牙に出てた千春っぽいヤンキーが子供を入園拒否されたことに腹を立て殴りこんだのを、伝説の元ヤン総長ちびっこが撃退するまでの第1話。ヤンキーが厳格な巨乳園長に向かって脈絡なく叫ぶ「男知らねぇ女みたいな声出しやがって」が露骨に伏線。ヤンキーが園児に暴行しようとしたりいくらなんでもな筋立ても多々あるが、乳っぷりと元ヤン先生の半ズレ眼鏡のフレームがとても際どくステキ、という読み方をするほうが多分、正解。


「恋愛そんぽ!」(上月まんまる

 おそらく、ばんがいちでやってた中華っぽいエロ武闘会モノで知られてる人。
 ゴーゴー夕張に眼鏡を装着させて黒スーツに着替えさて巨乳アタッチメントなセールスレディがフラれるたびに補償金SEXできたらお祝い金の童貞保険を販売にやってきたの第1話。レディの迫りっぷりが小気味よく、童貞主人公のおどおどっぷり強がりっぷりの造詣がなかなか不快深い。2話目が楽しみな創刊号の銀賞。


「松ヶ丘エンジェル」(めいびぃ)

 快楽天夢雅(休刊)、ネットの有料マンガで執筆している作家。
 松ヶ丘町の平和を守る3人娘が下着ドロのアンドロイドと乳放り出しながら初対決。なんでアンドロイドなのか、赤レンジャー役の娘の両腕がなんでサイボーグなのか、いろいろ説明不足ではあるが、ハッタリと躍動に溢れるバトルとエロスが楽しい。


「ウラカタ!」(御影甲六)

 初めて知った作家。ネットにもほぼ情報なし。しかし、新人とは思えぬ達者な作画が気になる。別名がありますか? 瀬菜モナコの別名義だった(コメント欄より)。
 アイドルだらけの水着大会に臨時で出演することになった巨乳ADちゃんが頑張る。頑張るADちゃんが可愛い。テレビ収録のセット裏の状況が案外詳しく描かれており、業界モノとしても読める。


巻中カラー「SCHOOLMATE」(あづまゆき

 コンビニ売りのキャンドールで主に執筆してる模様。
 12歳アイドルコンビの片方の兄は、二人の教師だったでドタバタ。特にどうということもない。というか、キャンドールとか別に読んでないし。


「あいチャンネル」(永野あかね

 むかぁし、まったくオタっぽさの欠片もない高校生の友人から「ネコでごめん!」の5巻を借りて知った人。なんでそんなの持ってたんだろう。
 彼女の振りを頼んだ地味で暗いあの娘がいざ本番になると可愛く変身。掲載作品の中で唯一挿入アリ。変身前がホントに可愛くなく、変身後は、笑顔で男の元カノ=ウェディングドレス姿にコップの酒をぶちまけ、花婿の肩を極める。二重人格な設定がうまい。


読切「山田家のIT革命」(THE SEIJI

 一般向けはチャンピオン本誌でやってた連載以来。連載作品のキャラを使ったエロマンガエロマンガ誌で掲載していて、それもアリかなと唸らされたのが記憶に新しい。
 あー、バカエロ(笑)。創刊号の特別賞。"ボロアパートに住む兄、妹、爺、隣人のオタクの4人が、妹を使ってエロサイトで一儲けしようと企むが……。"妹の白痴っぽいところとか、ダメポ繰り返す隣人とか、キャラが良くたってる。うん、面白い。


「コンビニん 予告編」(和六里ハル

 メガストアでばりばり活躍中。
 コンビニで働く金髪巨乳とコスプレ看板娘と999の車掌のような怪しい副店長(と主人公)が、いろいろドタバタするらしい予告編。次号で巻中カラー連載開始。REDでも今月号から別作品を連載開始。この人は掲載されてるエロマンガ家の中で、一番、メジャーに近いところにいると予想しておく。


「MORG」(佐藤村雨英太郎

 夢雅(休刊)で何度か読んだことのある作家。
 MORG=モルグと呼ばれるクスリにはまった人間は化け物と化して人間を襲うようになる世界で酸の剣を武器にそれを狩る主人公。大本海図+楳図かずおな絵柄で、グログチョなモンスターをベッタリ粘液化するまで打ち潰す。エロマンガのほうはここまで構図的に見辛くなかったと記憶しているが、描きたいものを描く機会ができて、力を入れすぎたか。次は読みたい作品。

*1:嵐が「ふたりエッチ」、烈が「恋愛ジャンキー」。

*2:嵐も、中ヒットの「殺し屋。」の番外編を掲載。また現在は掲載されてないが、創刊当初は本誌人気作の「マウス」「藍より青し」の番外編を掲載し、複数の柱を立てていた。

*3:発行部数を反映して、ヤンチャンのほうが若干マイナーアイドルが多め。

*4:嵐の主なエロマンガ家は、鬼ノ仁甘詰留太後藤羽矢子氷室芹夏増田剛=うらまっく・西川秀明まみやこまし。烈は、本文中で紹介。

*5:立ち読みしていた頃の目当ては岩明均の「ヘウレ−カ」なのでそもそもエロマンガでない。

*6:烈創刊号で巻頭グラビアを担当している愛衣は、ヤンガン10号でも巻頭グラビアを務めていた。うわ、顔がホームベースとか、ブコウスキーの小説でファックしてる女性の役が似合いそうとか書いてる。まぁ、今でもそう思ってるけど。