御茶ノ水「小川軒」

 JR御茶ノ水駅から聖橋(下で丸の内線が川を跨いでる橋、または「R.O.D.-THE TV-」オープニングで東京駅行き中央線を待ってる読子の奥に見える橋)を渡って、交番のある十字路を左前方に渡ったビルの一階にある、英国風カレーが売りの喫茶店
 秋葉原で飯屋を新規開拓しようと思い歩き回るものの、やっぱり520円で飲茶食べ放題とはいえいかにも油が酸化しまくってそうだなぁ……、などと躊躇しつつ裏通りをふらふらと湯島天神方面へ流れていくと、いつか入ってみようと思いながら数年は経っていたその店に思い当たり、意を決して踏み入る。
 「ビーフカレー」を注文。
 はっきり言って、一言さんお断りとまでは言わないが、シック過ぎる店である。聞こえるか聞こえないくらいの音で、クラシックが流れる店である。スニーカーやジーンズは似合わない店である。蝶ネクタイくらいが多分、グー(それは言い過ぎた)。出入り口のドアが異常に重かったのは、すでにその時点で気持ちが及び腰になっていたからかもしれない。
 でも、大盛りオプションとか何もつけずに、1,260円もするカレーなんて、初めて頼むんだよ! 関内のカレー館のほうがまだ何割かリーズナブルだ。
 テーブルの上のうんちくボードによると、25種類のスパイスと薬膳系の野菜を煮込んでいるらしい。裏の、カレー一食分のカロリーとか栄養分類表を見ると、六角形の栄養グラフが、「30歳代男女」を基準にしてあるのに気づく。つまり、そういう店だ。
 本郷の「プティフ」と同じく、また例の靴を逆さまにして底を抜いた入れ物に入ってカレーが出てくる(いいかげん名前調べよう……)。完全なソース状。ほかに、小サラダ。ドレッシングが甘い。らっきょうと福神漬け。基本を踏襲。
 で、ご飯だが、黄色に炒めたご飯が、真ん中にレーズンを6っつも乗っけたご飯が。
 少ねぇ。
 平皿に、盛ってあるというよりは、のばしてあるというほうが正しいんじゃないか。あえて盛りの高さを測るとすれば、横倒しの米粒2つ分くらい? 同じ欧風を名乗りながらラーメンカレーをメニューに持つ「プティフ」の前衛性にも打たれたもんだが、やはり、欧風は何かが他のカレーと違う。
 ビーフは、丁寧に網の焼き跡がついたものが、6切れほど。確かにいい肉だ。
 カレーもうまい。辛さとは無縁で、味わいで勝負する。まろやか。
 途中、何か、喫茶用の手作りのお菓子か何かを持ち帰りで買いに立ち寄る客は数人いたが、30分ほどいて、客は自分一人だった。
 多分、二度と行かない、というか行けない……。